2009年09月25日

フランス・テレコムの自殺騒動 La vague de suicides endeuille France Telecom

フランス・テレコムではこの1年半で23人が自殺した。最近の自殺者は23歳の女性だった。フランス・テレコムと言ってもピンとこないかもしれなが(↓にCMを貼り付けた)、Orange というブランドを世界中で展開しているフランスの電気通信会社だ。これはミステリーではなく、会社のリストラが大きな影響を及ぼしているようだ。もちろん日本のようにリストラは解雇を意味するのではなく、文字通り、企業のリストラクチャリング=再構築である。



ストレスのしわよせはもっぱら若い社員に向いているのかと思いきや、幹部候補の技術者までもが同じストレスにさらされている。社員の専門分野に関係なく、みんなが「自分は取り替え可能なパーツだ」と思いんこんでしまうような状況にある。組合もリストラのせいで、個人へのストレスが大きくなっていると言うが、リストラが原因ということは、どの会社でも、どの業種でも起こりうることである。

ある女性社員が告白するには、自分は仕事の内容に追いついていけなかった。今はどのチームからも排除されている状態。これまでは満足した状態で仕事ができたけど、今は新しい部長がやってきて状況がすべて変わってしまう。日本のように辞めさせるために嫌がらせするわけではないが、結局仕事から外されたりして一種のいじめにつながっていく。

この不満な不適応の状態をどうするか。フランス・テレコムにしてもリストラをやめるのは問題外だ。リストラはやらざるをえないのだ。

フランスでは正社員は法律によって手厚く守られていて、簡単には解雇できない。守られているがゆえに問題が深刻になっている側面もある。会社に残り続けると、たらいまわしにされざるを得ない。

技術系社員は安定しているイメージがあるが、意外に彼らこそ辛い状況に置かれている。技術刷新のペースが早くて、自分が研究してきた対象がすぐに使い物にならなくなるからだ。会社側にしてもすぐに役に立たなくなる人間を雇っておけない。技術者の雇用の仕方も見直されつつある。

情報通信技術が時代の主役に躍り出て以来、企業において研究開発やイノベーションが重要になった。イノベーションは事前に計画できるものではない。創造的なビジネスにおいてはマーケッティングすら役には立たない。製造業では最初から目的が決まっているが、情報通信産業では目的を試行錯誤によって探すしかない。この変化は産業構造だけでなく、その中に編成される人間のあり方まで変えてしまった。ひとつは組織の流動性と各部門の互換性を高めて、いつでも当ての外れた不採算部門を切り捨てられるようにしなければならない。いみじくも、↑のCMの最後で、Notre raison d'innover, c'est vous!(私たちがイノベーションする理由は、あなたがたです)と言っている。この「あなたがた」は気まぐれで、昨日の理屈が今日は通らない人たちなのだ。

国からの圧力を受けて、フランス・テレコムは9月18日から従業員たちが何に不満を持っているのか把握するために話し合いを始めた。







cyberbloom

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posted by cyberbloom at 23:18 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事+トレンド特集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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