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管理人:cyberbloom
★FRENCH BLOOM NET は「フランス」の情報化のプロジェクトです。具体的には、フランス語を学ぶ人やフランスに関心のある人のために、フランス関連情報を記事にして、カテゴリー別に蓄積しています。週末には「週刊フランス情報」と題して1週間のフランス関連ニュースをピックアップしています。この他にもサイトを運営しています。
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■ザーズの2枚目のオリジナルアルバム。タイトルの Recto Verso (レクト・ヴェルソ)は一枚の紙の表と裏の意。「マヌーシュ・ジャズ+シャンソン」に重心を置いた相変わらずの音楽性。
■世界中を踊らせるフランスの二人組、ダフト・パンクの新曲。おやおや、ディスコ・ミュージックではありませんか!しかもディスコ風味とか「もどき」ではなくて、直球勝負。なんせナイル・ロジャースを引っ張り出してきたんですから。
■マレーヴァ・ギャランテール。タヒチ生まれ。彼女の名前は「流れ星」を意味するらしい。1998年、ミス・タヒチ。1999年、ミス・フランス。1m78の長身とエキゾチックな美貌で、14歳からモデルとして仕事を始め、テレビのバラエティー番組の司会者なども努める。2006年に発表された彼女のデビュー・アルバム「ukuyéyé」はイエイエのリバイヴァル。フランス・ギャル「娘たちにかまわないで」、ジャクリーヌ・タイエブ「朝の7時」などをカバー。
■スーパーモデルにして女優が、2002年、本アルバムで歌手デビュー。ヨーロッパで100万枚を売り上げるヒットとなった。このアルバムはプロデューサーのお膳立によるものではない。自分で詞を書き、曲を作り、ギターまで弾く。さらにはハスキーで落ち着いた魅惑的な声の持ち主ときている。「ポンヌフの恋人」のカラックス監督のクリップ付。
■思い出したようにCMで使われ、プチブームが来る。最近では「シェリーに口づけ」がホンダのゼストのCMに使われていた。今の学生は「ウォーターボーイズ」を思い出すらしい。このベスト盤は「愛の願い」「愛の休日」「愛のシンフォニー」「渚の思い出」「哀しみの終わるとき」など、ポルナレフの名曲をほぼ網羅。私も買い直そうかな。
■アコースティックなフレンチ・ロック。女性ボーカル、ギター&ベースの構成。フランス語は淡々と囁くように歌うのがいい。90年代の前半によく聴いていたブリティッシュ系のギターバンドの音。系統としては80年代のネオアコにまでさかのぼる。最近はいろいろ試行錯誤してます。
■フレンチボサノバの名盤。かなりジャズも入ってます。ベルギー発。名曲「南の海の魚」のフランス語がとても心地良い。夏が近づくと聴きたくなる。
■ダフト・パンクのベスト・アルバム。今年のサマーソニックで来日していましたね。日本絡みで話題の多いダフト。2nd、Discovery では日本の伝説的なアニメーター、松本零士とコラボレーション。クリップ集は映画化されカンヌで上映。ダフトの2人は松本零士の「宇宙海賊キャプテンハーロック」を見て育ち、「日本は第2の故郷だ」とまで断言する。
■日本でも人気が出てきたフランスのバンド。日本のCMにも曲が使用。ヒップホップとロックのミクスチャーだが、この3rdアルバムはロック色が全面に。初回限定盤は秘蔵ライブ映像付(マーケットプレイスでget!)。メンバーはライブで客にナウシカを歌わせるほどの日本アニメおたく。
■2000年にアルバム「パズル」で衝撃的なデビューを飾ったフランスの男性4人組バンド、タヒチ・エイティの2nd。前作のポップセンスを維持したまま、ストリングス&ホーンを導入。懐かしい感じのするメロディが抜群にいい。英語で歌っています。
■exquiseさんもイチオシ。フレンチ・エレクトロの代表格、AIR(エール)による「ヴァージン・スーサイズ」のサウンド・トラック。レトロさと未来っぽさが同居しているるのがエールの味わい。独特のトリップ感覚に浸れるが、私にはどうしてもピンク・フロイドにしか聞えない。
■コートをまとったポール・ウェラーとミック・タルボット。カッコ良すぎる。二人のファッション、イギリス人が意識したフレンチ・カジュアルなのかもしれないが、パンツはくるぶしの上5センチでカットされており実にイギリス的。録音も当然ロンドン。写真をパリに、アルバム・タイトルをフランス語にしてもイギリス人がパリなんかでロックのレコードを録音できるはずがない。80年代の名盤。ジャケ買いOK。
■DJ CAM−フランスで最高のDJ。オシャレ&クールなジャズ・ヒップホップ。soulshine というだけあって、ソウルフルな女性ボーカルをフィーチャー。洗練されつつ、遊び心もふんだんに盛り込まれた1枚。大推薦!
■Mad Blunted Jazzなんて、タイトルがすでにカッコいい。内容は「Underground Vibes」と同時期のライブ(1995年レンヌ)のカップリング。タイトルの示す通り、地下室の闇を置く深くまで振るわせるようなヴァイブラフォンの響き。DJ CAMはMJQの現代版か。クール&タイトなインスト・ヒップホップ。10年経っても全く色あせず。
■フレンチロリータにしてコギャル系。今はJ・デップの奥さんだが、このアルバムは元カレのL・クラヴィッツのプロデュース。クラヴィッツのポップセンスがキラキラ輝く。BE MY BABYのクリップを改めて見たが、ファッションが著しくイマ風。ギャル系の学生も見入っていた。
■シャルロット・ゲーンズブールの久しぶりの新アルバム。映画とのタイアップではないオリジナルアルバム。バックにフランスの2人組エールが、さらにプロデュースにレディオヘッドも手がけるナイジェル・ゴドリッチ。
■ブランシェなパリを演出するコスト兄弟がプロデュースしたホテル・コスト。このホテルのラウンジ&レストランをイメージしたコンピレーションCD。今や9集目を数えるラウンジ系の人気シリーズだが、これは記念すべき第1弾。ベスト盤もあり。
■フランスで最も有名なラッパーの1st。フレンチラップの金字塔的な作品。音もジャズっぽく、スタイルもクール。MCソラーは移民の置かれた現実の告発よりも、純粋に言葉による表現を志向している。ことわざやクリシェで遊び、シラブルと韻を自在にあやつる。
■セーヌ河のジャズ。青い頃のバルネ・ウィラン。初っぱなの"SWING 39"がいい。口につけるリードがこなれず、青臭く乾いたところ、パーカッションの勢いにまかせて、伸びる伸びるテナーの音粒…
■ペトルチーアーニは繊細な演奏をするフランス生まれのピアニスト。なかでもオープニングチューン"THE PRAYER"と2曲目"OUR TUNE"は、たまに無性に聴きたくなるんよね。
■泣く子も黙る、モダン・ジャズ・カルテット。パリを舞台にしたジャズの名盤のひとつ。ヴァイブラフォンの響きが何ともクール。「Django」と併せて聴きたい。
■フランスといえばダバダバダバ。ダバダバ・スキャットの名盤。Swingle SingersがMJQと華麗なバロック・ジャズをやっている。「G線上のアリア」など。バロックもジャズもフランス発じゃないが、2つが組み合わされるとそれっぽく聞こえるのが不思議。MJQがコンコルド広場で、こちらはヴァンドーム広場。
■「枯葉」「マイ・ウエイ」(=コム・ダビチュード)、「男と女」など、誰もが知っているシャンソンの名曲をボサノバ・アレンジで歌う。ジュリエット・グレコはダメでも、このアレンジだったら今の学生も聴けるみたい。イントロに本場のボサノバのサビを忍びこませている。
■フランスのプログレといえば外せないのがこれ。不思議な響きを放つマグマの歌は、彼らが考案したコバイア語によって歌われている。彼らはコバイア星からやってきたコバイア星人で、このバンドによってコバイア神話を語り継ぐ。これも70年代のサイケカルチャーの産物だが、ここまで変さを徹底できるのはフランスならではか。リーダーのドラマー、クリスチャン・ヴァンデールはコルトレーンの影響下にあると言っているが、プッチーニのオリエンタル・オペラ(「トゥーラン・ドット」とか)にも似ている。
■フランス語圏のベルギーのグループ。室内楽風の構成なのでチェンバー・ロックと呼ばれる。バスーン(ファゴット)のこもった低音や、地の底から響いてくるようなハーモニュームの音が特徴的。夏の肝試しにも使えそうな、呪術的でフリーキーな音作りだが、リーダー、ダニエル・ドゥニのドラムに導かれるアンサンブルも凄い。このLP盤を手に入れるのにどんなに苦労したことか。今やアマゾンで簡単に買える。
■ライ(アルジェリア起源のポピュラー音楽)で注目すべき傾向のひとつは、フランスにおけるライとr'n'b の融合。2004年に Kore & Skalp というコンビが多くのアーチストを集めて製作したRai'n'b Fever 。このコンピレーションは大セールスを記録し、フランス全体のチャートでも2位に。なかでも収録曲のひとつで 113, Magic System, Mohamed LamineによるGaou a Oranはその年の「フランスのクラブで最も頻繁にかけられた曲」となった。
■パトリシア・プティボンは、近年、ヨーロッパ各地の大劇場のオペラ公演に重要な役どころで出演し、高い評価を得ているフランス人ソプラノ歌手。このプティボン、たんに歌や演技がうまいオペラ歌手というのとはわけが違い、チャーミングなキャラを生かした、かなり規格外のパフォーマー。最大の魅力は、天上の聖性と地上の下世話さのあいだを一瞬にして往還する表現の自在さであろう。
■エレーヌ・グリモーはいまや飛ぶ鳥を落とす勢いのピアニスト。エクサン・プロヴァンス生まれのフランス人であるが、ドイツ音楽を好み、ベートーヴェンやブラームスの協奏曲をプログラムに選ぶことが多い。グリモーは幼い頃から周囲と溶け込めず、自閉症に近い性格を持っていた。彼女を変えたのが狼との出会い。20歳からアメリカに移り住んで動物生態学を学び始めた彼女は、狼との交流を通して世界に向かって心を開き始める。と同時に、彼女の音楽家としての魂は目覚しく成長を遂げた。
RECOMMENDED BOOKS
■映画やミュージカルもいいが、レミゼを原文で親しむ入門書にうってつけ!19世紀の挿絵をふんだんに収録し、付属のCDを聞き、ユゴーの専門の第1人者の解説に導かれて原文を味読すれば、『レ・ミゼラブル』の世界がまったく違った相貌でよみがえる。
■なぜジャン・ヴァルジャンは、パリのその街区に身を隠したのか?里親から虐待を受けるコゼットが、夜店で見ていた人形はどこ製か?19世紀の美麗な木版画230葉を106シーンに分け、骨太なストーリーラインと、微に入り細を穿った解説で、“みじめな人々”の物語をあざやかに甦らす。長大な傑作の全貌がこれ一冊でわかる。
■NHKのドキュメンタリー「世界わが心の旅・宮崎駿 ― サン=テグジュペリ紀行 〜南仏からサハラ」で、宮崎駿はサン=テグジュペリが通った郵便航路、トゥールーズ〜ブエノスアイレス間のうち、モロッコのキャップジュビー飛行場までの行程をたどっている。宮崎駿はこの取材旅行にひどく感銘を受け、帰ってからスケッチをかき、それがサン=テグジュペリの『人間の土地』『夜間飛行』(新潮文庫)のカバーに使われている。『人間の土地』には取材旅行のあいだに記した文章「空のいけにえ」があとがきとして収載されている。
■デパートの黎明期を活写したエミール・ゾラの『ボヌール・デ・ダム百貨店』。物語の主軸は、パリのデパート「ボヌール・デ・ダム百貨店」の貧しい女店員である主人公ドゥニーズ・ボーデュと、このデパートの経営者、青年実業家オクターヴ・ムーレとの身分違いの恋愛。しかし読み進めるにしたがって、ドゥニーズのシンデレラ・ストーリーよりも、消費社会の権化とも呼ぶべきデパートの実態に興味がひきつけられる。
■モノが氾濫するなかで育った日本の少女たちは世界の消費文化の中でも特異な存在である。彼女たちは階層的なアイテムだったヴィトンやエルメスを日常的に使いまわす。ブランド世代の母親たちが「上がり」として手に入れたブランドと、その過程で獲得した鑑識眼は彼女たちにとっては出発点に過ぎない。もはや憧れではなく、彼女たちはモノとしての機能性やデザイン、イメージに徹底的にこだわる。そういう新しいコンテクストにエルメスも捉えなおされる。
■ユベール・マンガレリ『おわりの雪』:フランスの「今」を感じる現代小説のひとつ。原文はフランス語文法を一通り終えた人ならじゅうぶん読める平易なことばで書かれている。オリジナルの文章を味わってみるのも楽しい。
■2002年,東京でミュージシャンとして活躍していた著者はパリに移住する.そして,このお洒落の代名詞ともいえるフランスの首都にて予期せぬ事態に次々と遭遇することになる.念願のプジョー・ヴォーグ(ペダルのついたスクーター)に乗ればガス欠となり,ガソリンスタンドを求め街を彷徨う.アパートでは何の予兆なく唐突に天井が落下する.当たり前といえば当たり前だが,花の都での生活は,バラ色ばかりというわけではない.著者の記述が数ある著名人/芸能人のパリ滞在記と異なるのは,そのユーモラスな筆致にある.
■祐天寺りえ『フランスだったら産めると思った』:日本の少子化が問題になっているが、フランスは積極的な政策で少子化に歯止めをかけている。本書はフランスに住むことになった日本人の女性の視点から、フランスの子育て事情について書いている。これからはどんな家族のあり方が望ましいのか、具体的にイメージできる本。
■これまでの「西洋音楽史」と銘打った本の多くは例外なく、各時代の専門家による分担執筆だった。これらは専門家に対して正しい専門的な知識を万遍なく提供するだろう。しかし、様々な関心やつながりからクラシックについて知りたいと思っている普通の人、例えば、「のだめカンタービレ」を読んでクラシックに興味を持った人が、それを理解できるだろうか。理解できる、できない以前の問題として、そういう「使えない」音楽史に意味があるのだろうか。ある種の正しさはあるかもしれないが、ナンセンスな専門知識ではないのか。そういう問いが著者をしてこの本を書かせたようだ。
■本書はコロンブスのアメリカ大陸発見から現在に至るフランスとアメリカの関係を綿密に検証している労作だが、とりわけ第2次世界大戦後の米仏関係を描いた箇所が興味深い。フランスの知識人たちのあいだで「フランス精神はアメリカに占領され、植民地化されつつある」という危機意識が生まれたのは、フランスが経済的に衰退し、外交の舞台でも脇役に追いやられ、自らのアイデンティティーの最後の砦を自国の文化に求めるしかなかったからである。そして、津波のように押し寄せたアメリカの大衆文化をフランスの知識人の理解を超えていた。ブルジョワ的な教養という枠組みしか知らなかった彼らは、それが俗悪なサーカスか、あるいは帝国主義的なプロパガンダにしか見えなかったのである。
■『中村屋のボース』:インド独立運動家にしてアジア主義者、ボースの波乱万丈の生涯。急進的な反英抵抗運動の過程で、日本に逃亡し、そのまま日本に帰化する。潜伏先の相馬家の人々に本場インドのカレーを伝授し、それがレトルト化までされている「中村屋のカリー」に結実する。
2009年09月23日
まずはこのニュースから。
最悪は仏伊、日米加は「合格」の報告書 対アフリカ資金援助で ■マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏と著名なミュージシャンらが支援する援助団体ONEは11日、主要国首脳会議(G8サミット)の加盟国によるサハラ砂漠以南の貧困国に対する資金援助活動の「評価」報告書を発表し、イタリアとフランスが約束を最も守っていない国と糾弾した。
■同団体には、ロックバンド「ブームタウン・ラッツ」のボーカリストのボブ・ゲルドフ氏やU2のボノ氏も協力している。資金援助額で約束を順守しない最悪の国はイタリアと主張、フランスは2005年レベルよりも劣ったとしている。
■半面、世界的な景気後退に襲われる中で、米国、日本、カナダは約束を守る金額を提供していると評価。今年のG8サミットはイタリアで開かれるが、ゲルドフ氏は「約束を守らない国が世界を指導出来るだろうか」との不信感を表明した。
■主要国首脳会議は英スコットランドで2005年に開いたサミットで、アフリカ向け援助額を2010年まで倍増の500億ドルにすることを約束している。ゲイツ氏は報告書の中で、アフリカ向け援助の大多数は衛生、教育や農業振興などに充てられるとして、10億ドルがワクチンに使われれば、50万人の命が助かるとも強調した。
(6月12日、CNN.co.jp)
ロックアーティストが慈善家になって久しい。それはエチオピアの飢餓に衝撃を受けたボブ・ゲルドフの呼びかけに応じて結成された1984年のバンド・エイド(Band Aid)にまでさかのぼる。80年代世代にとってゲルドフの歌う「哀愁のマンディ」(ブームタウン・ラッツ)やバンド・エイドの「Do they know it's Chrismas?」は忘れられない曲のひとつだが、当時はロックアーティストがアフリカのことまで気にかける必要があるのか、ロックもまたアフリカの搾取を始めたのか、などといろいろと思ったものだ。一方でグローバリゼーションの進行は私たちの日常的な消費生活がどのようなシステムにのっかっているのかを世界規模で可視化させてしまった。
根本的な問題はその著しい格差を生み出すシステムそのものにあるはずだ。しかし、ハリウッドスターやロックアーティストたちはそれと同じシステムにのっかってお金をもうけているのである。彼らはアフリカに儲けの一部を申し訳程度にキャッシュバックすることでシステムを温存しているように見えなくもない。そういうやり方は法外な利益を手にしている少数の金持ちたちの罪悪感を和らげるだけで、全くアフリカの役に立ってはいないと『デッド・エイド(=役に立たない援助)』(原題の Dead Aid は明らかに Band Aidに対するあてこすりである)の著者、ダンビサ・モヨ Dambisa Moyo は批判する。
ダンビサ・モヨはザンビア生まれの30代の女性。父は南アフリカ人の炭鉱労働者の息子で、学者であり反汚職運動家。母はインド・ザンビアン銀行の会長である。モヨはハーバードで修士号を、オクスフォードで博士号を取得し、8年間、ゴールドマン・サックスでグローバル・エコノミストとして活躍した。アフリカ大陸の中心的な問題についてアフリカ人の意見がほとんど聞かれることがない。そういうフラストレーションが、モヨにこの本を書かせたのだ。
これまでアフリカへの投資や資源開発競争は旧宗主国が監督してきた(フランスはその代表格だ)。そこに中国や新興国が参入するようになり、多くのアフリカ諸国の経済が依存しているコモディティ(一次産品)価格が上昇し、それが欧米の投資家の利益も増加させた。一方でアフリカには希望に満ちた新しい世代が誕生し、世界をまたにかけて活躍している。モヨもそのひとりだ。彼らはアフロポリタンと呼ばれ、中には外国資本と地元資本をつなぐ仲介役になるチャンスをつかんでいる。こうした活動はアフリカの国々にこれまでとは違う資金調達の選択肢を与えている。
従来の支援のような、施し同然の欧米の援助による非効率なやり方では何の成果も得られないとモヨは言う。援助活動は効果がないばかりか、アフリカの問題の大半を生み出している。民間投資を締め出し、汚職を蔓延させ、民族の対立に油を注ぎ、法治を不可能にしてしまうからだ。ボブ・ゲルドフはイタリアやフランスに援助が少ないと糾弾しているが、援助国側にしても大きな財政負担を強いられる。
アフリカにはすでに新しい貿易パートナーがいて、もう欧米に頭を下げる必要はないのだ。モヨは『デッド・エイド』の中で欧米の開発計画の60年にわたる失敗を容赦なく査定しながら、新しい選択肢に焦点を当てている。彼女の提唱するオルタナティブとは、世界の貿易構造をシフトさせるための機会と自由をとらえながら、マイクロファイナンスと財産権法の活用をブレンドするやり方だ。すでにアフリカには民間資本が次々と流入している。中国もアフリカのインフラ整備に投資し、国債を発行するアフリカの国も増えている。
さらにモヨは過激な処方箋を用意している。それはアフリカの援助依存国に対して5年以内に援助を打ち切ると援助国に通告させるというものだ。それを契機にして、援助依存国政府は商業ベースの資金調達の方法を模索し始め、ビジネスが繁栄する環境作りに着手するだろうと。
その場合、アフリカの貧困撲滅運動にいそしんでいるハリウッドスターやロックアーティストはどうなるのか。
いなくなるだけ、とモヨは言う。マイケル・ジャクソンが信用危機の解決策についてアドバイスを始めたら、イギリス人はいらだつでしょう?歌手のエイミー・ワインハウスが不動産危機を終わらせる方法について語ったりしたらアメリカ人は怒り出すでしょう?アフリカ人だってムカつくのは当然だと思わない?
つまり、アフリカの人々が専門家でもない人間に介入を受け、アドバイスされているということであり、彼女はそのことでボブ・ゲルドフやボノに対していらだち、ムカついている。彼らはモヨの発言に対してどう答えるだろうか。欧米メディアにとって「アフリカは手の施しようがない」という破滅的なシナリオを描く方が楽なのだ。それが援助のさらなる流入を正当化してしまう。もちろんモヨの批判は一面的で、欧米の援助がすべて無駄だったということは決してないだろうし、彼女のラディカリズムはアフリカに対する援助のうまく機能していた部分も壊しかねないだろう。しかし、それほどアフリカの援助依存は深刻な問題なのである。システム全体に手をいれなければならないのだ。
モヨはロンドンで快適な生活を送っているが、ザンビアの少女時代の夢はフライト・アテンダントになることだった。そのときは奨学金をもらっハーバードとオックスフォードに学び、天下のゴールドマン・サックスで働くなど夢にも思わなかった。それは両親のおかげだと言う。彼らはザンビアの首都ルサカの大学の一期生だった。そして1970年代に高等教育を受けるためにアフリカを離れたが、彼らは国の未来を築く力を身につけるとすぐに帰国した。もちろんアフリカの一部はあいかわらず混乱と衰退から抜け出せていないが、彼らの世代が確実に下地をならし、モヨのような人物の出現を待っていたのである。
次の元フランス代表のデサイーのニュースはモヨの考え方に通じるところがないだろうか。アフリカはあらゆる分野においてターニング・ポイントを迎えているが、そこには欧米の憐憫の視線に同一化しない、アフリカのためのオルタナティブを考えるアフリカ生まれのキーマンが確実に育っている。
「W杯の遺産をアフリカ全土へ」、元仏代表デサイー氏の想い ■翌年に行なわれるW杯の前哨戦として南アフリカでコンフェデレーションズカップが行なわれているなか、元フランス代表DFでユニセフ親善大使のマルセル・デサイー氏(40)が「南アフリカだけではなく、アフリカ全土がW杯の遺産を受け継いで欲しい」と想いを語った。現地時間19日、ロイター通信が報じている。
■ デサイー氏はガーナ生まれ。4歳のときにフランスへ移住した同選手は、のちにル・ブルー(フランス代表の愛称)の中心選手として活躍し、1998年W杯、EURO2000でのタイトル獲得に貢献した。代表キャップは116を数え、クラブレベルではマルセイユ(フランス)、ミラン(イタリア)、チェルシー(イングランド)など名門を渡り歩き、3年前に現役を退いた。
■輝かしいキャリアを誇るデサイー氏だが、ロイター通信に対し「アフリカサッカーの将来にとって鍵となるのは、ディディエ・ドログバやサミュエル・エトーのような、海外で成功し誰もが知っている選手ではない。アフリカ各国がトップクラスの若手選手を自国リーグで長くプレーさせ、そうすることでいかに自国リーグがレベルアップしていくかということだ」と、若い才能を国内に留めることが必要だと述べた。
■「最高峰の選手はヨーロッパに出て行くのが常であり、国内に残留させるのは難しい」と、その困難さを承知しているデサイー氏だが、「インフラが向上すれば、もう少し長く選手を残留させることが可能かもしれないし、これほど若いうちから外へ出て行くこともなくなるかもしれない」と、各国の社会基盤が整えば現状を変えられるかもしれないと期待をかける。
■そうした意味で、デサイー氏は今回のコンフェデレーションズカップと翌年のW杯が、アフリカ全土にとってターニングポイントだと考えているようだ。同氏は「我々は、アフリカサッカーにとって重要な時期を迎えている。逃してはならないチャンスだ。W杯の遺産によってアフリカの考えに変化が起こるかもしれない」とコメント。W杯によってアフリカ全土の意識が変わることを望んでいた。
(6月20日、ISM)
□
Lunch with the FT: Dambisa Moyo By William Wallis
Published: January 30 2009
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RECOMMENDED DVD
■「レ・ミゼラブル」…数ある同名作品の中でも最高傑作と称される2000年フランス製作超大作TVシリーズ、ついにノーカット完全版(DVD-BOX)で登場。ジャン・ヴァルジャンにジェラール・ドパルデュー、ジャヴェール警部にジョン・マルコヴィッチ、ファンティーヌにシャルロット・ゲンスブールという豪華キャスト。買うべし!
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■「汚れた血」を見たときの衝撃は未だに忘れられない。ハレー彗星が接近し、気温が異常に高い近未来のパリ。STBO という愛のないセックスで感染するウィルスが蔓延している。夜の底にまどろむようなアンナの重さに対する、リーズの信じられない軽やかさ。髪をなびかせ、スカートの裾を翻して夜のパリを軽やかに駆け、アレックスに「バイクの天使」と呼ばれるリーズ…
■パリ、ジュテーム。18人の気鋭の監督たちによる、パリを舞台にした持ち時間5分の「愛」の物語。「愛」は恋愛に限らず、親子の愛であったり、さらには街そのものへの愛であったり、いろいろな「愛」のかたちが描かれる。登場する人々もそこに暮らす人々だけでなく、旅行者、移民、留学生などさまざま。日本からは諏訪敦彦監督が参加。
■未だに根強い「アメリ」人気。もう見た人も、これから見る人も。ジュネ監督は「エイリアン4」を撮っているが、「アメリ」で彼のSFXの技術は現実の異化にいかんなく発揮。美しくもグロい。
■ジャン・レノと広末涼子が東京を舞台に共演。リュック・ベッソン制作のB級映画だが、あからさまな日本幻想が炸裂。先端(アキバ)と伝統の対比など、見所(ツッコミ所)も満載。広末のフランス語に勇気付けられる学生も多い。
■移民のゲットー、バンリュー(郊外)を舞台にし、従来のフランス映画のイメージを覆した衝撃的な作品。ここは本当にフランスなのか。最近パリ郊外で起こった暴動の背景や、移民の若者たちの鬱屈した心情をを知るためにも。
■今日、最も有名なフランス映画と言えばこれ。今やパリ以上に注目されているマルセイユを舞台にしたカーアクション映画。4作目まで出ています。ヒップホップやライを取り入れた音楽にも注目。
■ジャームッシュによる5つの都市を舞台にしたオムニバス作品。笑いを誘いつつも、差別問題がさりげなく扱われいてるパリ編が秀逸。ウィノナのLA編、ベニーニのローマ編、ヘルムートさんに癒されるNY編。トム・ウエイツの音楽も印象的。
■ソフィア・コッポラ監督の「ヴァージン・スーサイズ」。ソフィア・コッポラはアメリカの巨匠フランシス・コッポラの娘で、これは初監督作品にして、衝撃的なgirly映画。サントラを担当しているのは、彼女自ら依頼したというフランスの2人組Air(エール)。
■ベトナム出身のトラン・アン・ユン監督の「夏至」。少年時に家族と共にフランスへ移住し、フランスで映画について学ぶ。濡れれたような深みのあるその色彩は、官能的とも言えるほど。ウォン・カーウァイ監督の「花様年華」を撮影したリー・ピンビンを迎え、さらにその繊細さに磨きをかける。他に「青いパパイヤの香り」「シクロ」。現在、松山ケンイチを起用した村上春樹の「ノルウェイの森」を撮影中。
■「ぼくが街でアントワーヌ・ドワネル(=主人公)風の若者を見つけるたびにいつも思い出すのは『大人は判ってくれない』の中で通りを駆け抜ける、あの飢えたようなアントワーヌの最初の姿である。彼は世界と折り合いを付けることが出来ずに終始スクリーンをうろつき、楽しもうとしてみたはいいが大きすぎる代償を払い続ける。それは全く持って人生そのもののようで、アントワーヌ・ドワネルはやはり生まれたときから人生の本質の中にいたのである」(曾我部恵一)
■定年退職前の厳しくも優しいロペス先生のもとで、勉強したり遊んだりする13人の子供たちの姿を追った、心温まるドキュメンタリー映画。Etre et Avoir―タイトルにもなっているこの二つの動詞から見ても、フランス人にとってのフランス語の始まりも、日本人がフランス語を始めるときと全く同じなんだな、と分かります。フランス語をやっている人なら、まるで自分も小学生になったような気分になり、子供たちと一緒に「うぃぃ〜!」「ぼんじゅ〜る、むっしゅ〜」と言ってしまいそう。
■原題は L’auberge espagnol−訳すと「スペインの宿」。これは今のヨーロッパを象徴するような文化的な混沌状態を指し、そんな中でどんなアイデンティティが可能なのかを問うている。主人公はパリ大の学生だが、ヨーロッパの交換留学システム「エラスムス計画」を使って、バルセロナへ留学し、ヨーロッパ各国から集まった学生たちと共同生活を始める。それぞれの国のタイプが典型的に描かれいているのが面白い。映画の公開後、エラスムスの利用者が倍増したという、留学したくなる映画。ラストシーンも清々しく、続編「ロシアン・ドールズ」へと続く。
■ゴダールとストーンズの奇跡的な出会い。ジャケットのデザインがすでに買いだ。ミック・ジャガーのまさに悪魔的な、シャープなシルエットを見よ。オヤジバンドには用はない。このDVDによって自らとどめを刺されるがよい。「悪魔を哀れむ歌」が完成していく過程がスリリング。
■ヌベル・ヴァーグ期の未だに色褪せないオシャレ映画。犯罪に手を染めるスタイリッシュな若者とジャズの組み合わせ。シーンにカッコよく色を添えると思えば、唐突にシーンを切り裂くジャズのフレーズ。主人公のミシェルは、ジーン・セバーグ扮するヤンキー娘、パトリシアをひたすら口説く。主人公たちが頻繁に口にする当時の流行り言葉、dégueulasse(最低)!がキーワードになっている。
■フランソワ・オゾン監督、「8人の女たち」。ドヌーブ、ベアール、ユペール、アルダン、ルドワイヤン、フランスの大御所女優たちが勢揃い。優雅なミュージカル映画かと思いきやけっこうえげつない毒のある幕切れ。
■「ベルリン・天使の詩」。ロックな映画監督、ヴェンダースならではの映画。そしてエトランゼ(流れ者)の映画。流れ者の天使、ピーター・フォークの演技が渋く、流れのシンガー、ニック・ケイブのライブシーンがカッコよすぎる。タキシード・ムーンを始めとする、サントラもパーフェクト。流れの空中ブランコ乗りのお姉さんがフランス語を話している。
■パララパララ…とアンニュイな感じで聴こえてくるトランペットの音。マイルスのクールなトランペットが映画を先導する(彼は画面を見ながら即興で音楽をつけた)。完全犯罪の計画を立てるが、一つのミスがもとで事態が急変し、会社のエレベーターに閉じ込められてしまう…ルイ・マル監督による上質のサスペンス映画。
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