2009年09月03日

分子調理法 gastronomie moléculaire

料理革命分子調理法は、88年に物理学者エルヴェ・ティス氏が中心となって提唱された、レシピを化学の知識で再解釈し、また化学の知識を積極的に料理に応用するという方法だ。例えば、チョコレートムースを分子レベルで解釈すると、必ずしも卵は必要なく、水と空気と脂肪分があればいいということになる。分子レベルで考えることでレシピの常識が覆されるのだ。

フランスのポワティエに子供の向けの科学テーマパーク、「フュチュロスコープ FUTUROSCOPE」があり、その中に分子ガストロノミーのレストランがある。15ユーロの子供用のキットもあり、実験感覚で楽しめるようだ。東京・青山に出店している三ツ星シェフのピエール・ガニエールは分子ガストロノミーを応用した独創的なレシピを公開しており、エルヴェ・ティスも協力している。写真の本は、ガニエールとティスのコラボレーション。物理学者が独創的なテーマを提案し、三つ星シェフが奇抜なレシピで応えるという形式をとっている。

□POITIERS-FUTUROSCOPE http://www.futuroscope.com/
□PIERRE GAGNAIRE A TOKYO http://www.pierre-gagnaire.jp/

スペインでは90年代の初めにフェラン・アドリアが分子調理法で名を馳せた。アドリアは「私は分子料理を作っているのはなく、料理は分子でしかないということ」と言っているが、分子調理法とは食物を加熱する段階で何が起こっているのか理解することである。去年、ミシュランの3つ星を返上したオリヴィエ・ローランジェは元科学者で、調理の際の多くの謎を解き明かした。なぜパンの皮は中身の部分よりも味があるのか、なぜ人間の母乳が牛乳よりも消化されやすいのか、どうして卵一個で24リットルのマヨネーズが作れるのか、なぜスフレを焼くときはすぐにオーブンに入れた方がいいのか、なぜブイヨンには最初ではなく最後に塩を入れたほうがいいのか、化学者は説明することができる。

液体窒素による瞬間凍結法を駆使するシェフ、ティエリー・マルクスは「化学がシェフに仕えることはあっても、逆ではいけない。化学に親しむのは大切なことだが、働きかけるのはシェフの側であるべきだ」と自戒をこめて言う。また「おいしいと感じるために必要なのは上質のセップ茸であり、質の悪いセップ茸に上質のセップ茸の香りをつけることではない」と安易な化学の応用に警鐘を鳴らす。「料理人はアーティストではなく、あくまで家具やオルガンを作ったりする職人と同じ。ベーシックな知をきちんと伝えることが重要になる」。マルクスがそう言うのは、料理には古典的なベースを学ぶことが不可欠であるにもかかわらず、分子調理法は技術や科学の力によってそれを省略して最先端の料理を学べると勘違させ、アーティスト気取りの若いシェフを生み出しがちだからだ。

□「分子調理法は料理の未来をどうかえるのか?」『クーリエ・ジャポン4月号』参照




cyberbloom

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posted by cyberbloom at 13:40 | パリ ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | CAFE+WINE+GOURMET | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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