2009年07月07日

GOOGLE EARTH + STREET VIEW

The Google Story: For Google's 10th Birthdayグーグルの野望は世界中に眠る情報をすべてインデックス化することらしいが、それは空間の情報化=征服にも向かっている。最近公開された「Google Earth」の新機能「Ocean in Google Earth」を使えば、鮮明な画像で海洋探索を楽しめる。さらには、Google Mars 3Dを利用すれば、高解像度画像を通じて火星にある巨大なビクトリア・クレーターを探検することも可能だ。

それは軍事バランスにまでも影響を与えている。パレスチナの軍事組織は攻撃計画にグーグル・アースを活用しているらしいし、以前ならば一般人の目に触れるはずもなかった軍事機密を簡単に見ることができるようにもなった。グーグルアースで用いられている衛星写真の分解能力は10年前の軍事衛星の水準に達しているという。衛星写真による機密漏洩を防ぐため、中国軍が新たな隠蔽技術開発に乗り出したことも報じられていた。

グーグルの先端技術は個人のプライバシーとも衝突している。インターネットで地域画像を閲覧できるグーグルのサービス「ストリートビュー(SV)」をめぐり、日本で全国の議会や弁護士会などから中止や改善を求める声が相次いでいる。「ストリートビュー」は検索サービス「グーグルマップ」の付加機能で、日本では去年の8月5日から東京や大阪、京都、神戸など12都市を対象に開始。地図の道路をクリックすると、高さ2・5メートル(車に設置したカメラの高さ)からの360度パノラマ写真を見ることができる。

みんな自分の家がどう映っているのか気になるようだが、実際見てみるとベランダの洗濯物が写っていたり、表札や車のナンバーが読み取れたり、明らかなプライバシー侵害が認められるケースが少なくないようだ。去年、グーグル・アースを使って金持ちの邸宅を調べ、留守中に仲間を呼んでプールサイドでパーティーをするという愉快犯のニュースもあった。

先日行ったレストランのサイトにストリート・ビューがついていたので、店の周囲の様子を見てみたが、店の前に立って周囲を見回す視界が得られる。実際そこに行ったとき、奇妙なデジャヴュ感覚に襲われた。デジャヴュ(déjà-vu フランス語で「すでに見た」の意)そのものだが、自分を見失うような錯覚の経験であったデジャヴュが、あからさまで透明な体験になってしまったわけだ。

フランスの社会学者、ジャック・エリュール Jacques Ellul はテクノロジック la technologique という言葉を使い、ラディカルなテクノロジー批判を展開した。エリュールはエコロジー的な思想の先駆けともなった人物で、イヴァン・イリイチやジョゼ・ボヴェにも影響を与えた。テクノロジーを社会に組み込み、テクノロジーが不可欠な社会的世界を構築する。それがテクノロジックである。本来テクノロジーは手段であるはずなのに、それが自己目的化し、自動的に、自己拡大的に動き始めるのだ。それは最適な作動様態を執拗に探し求め、それを操作する人間までも侵食する。人間のための最適化ではなく、テクノロジーはそのものへの最適化を追求するのだ。まさにグーグル・アースの問題そのものである。

グーグル・アースは監視を目的としているわけではないが、すべてのものを見せたい=見たいという欲望がある以上、監視と同じ視線を共有することになる。それも国家の軍事的な監視技術とぶつかりあうレベルにある。現在の監視技術が実効性の追求からも切り離され、自己目的化しているように、グーグルの技術も、テクノロジーによって知覚を完全なものにしたいという欲望のままに突き進んでいる。しかし、その社会的な影響には無頓着で、そのテクノロジー信仰と拡大志向にはある種の無邪気さすら感じてしまう。テクノロジーの可能性をとことん追求してしまう強い欲望は、エリュールによると、宗教的な根源に根を張っているという。つまり、西洋人は超越的基準への参照なしには社会的な問題を解決できないのだ。監視技術を「神の視線」に似せながら、すべてを照らし出していくことは、彼らにとって違和感のない行為なのだろう。




cyberbloom

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posted by cyberbloom at 20:10 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | WEB+MOBILE+PC | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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