2009年06月05日

学生の住居不足とスクオッター

Ces étudiants qui squattent près de la Sorbonne
A deux pas de la Sorbonne, un ancien dispensaire du Crous vide depuis quatre ans, est depuis un mois occupé par une dizaine de jeunes du Collectif Jeudi Noir, pour dénoncer le manque de logements étudiants.
(TF1,fev.14)

上記のニュース(2009年2月14日)の内容はだいたい以下の通りである(注:リンク切れしています)。

ソルボンヌ大学のすぐそばにある、4年前に閉鎖された学生支援組織(CROUS=クルス)の無料診療所を「暗黒の木曜日Jeudi Noir」のメンバーが学生の住居不足を告発するために1ヶ月前からスクオット(squatte, squatter 不法占拠)している。この診療所は改装工事のために4年前に閉鎖されたが、まだ工事は始まっていない。そこでは熱いお湯も出るし、暖房もあるし、PCも使える。建物の部屋は週末にピクニックに出かけたって感じで放置されていたので、そのまま住むことができたという。学生でもあるメンバーのひとりが言う。「パリでは12uの部屋が月150ユーロするが、この手の物件に大多数の平均的な学生にはアクセスできない。パリには30万人の学生がいるが、CROUSは3700人分しか部屋を提供できていない。100人に1人だ」。別の学生は「400ユーロの奨学金があるがそれだけでは生活できない。スクオットするしかなかった。みんな同じような状況だ。私たちはプロのスクオッターではないが、現実に住居が無いからそうするしかなかった」と。当然彼らは立ち退くように言われているが、拒否している。

木曜日はフランスで住宅情報誌が発売される日だ。住むところに困っている若者にとって憂鬱な日であり、それと世界恐慌が起こったブラック・マンデー lundi noir にひっかけて、「暗黒の木曜日」という名前がつけられた。彼らはときには非合法的な方法を使って(こういうやり方は日本では受け入れられないだろうが)、フランスの劣悪な住宅事情を明るみに出すことで世論に訴える。2007年のクリスマスの直前に、「暗黒の木曜日」を初めとする3つの組織が、パリ証券取引所の正面、パリのラ・バンク通りにある建物を不法占拠するという出来事もあった。彼らによれば、新しい「住宅省」を立ち上げるために「徴用」したのだ。それは3年前から使われていないCIC銀行の所有物で、そこをフランスの住宅問題の議論の場にし、世論にアピールするためだ。とりわけ金融危機に見舞われる直前までパリの不動産はバブル状態で、不動産や家賃が高騰し、パリの学生の住居不足にも深刻な影響を与えていた。

スクオッター(squatter)は、都心の廃屋・廃ビルや他人の敷地や家屋の不法定住者を指すが、ヨーロッパを中心に若者や社会運動家が使われていない廃墟や遊休資産を不法占拠するケースも多い。大都市などでは、古いデパートや工場などの建築や住宅街が地域の衰退によって空き家となったり、あるいは富裕層が投機目的のために都心の住宅を住まないまま保有することがある(フランスには200万戸の空き家があり、その多くが投機目的で放置されている)。

一方で、家賃の高騰や住宅不足で住む場所に困っている人々が大勢いる。スクオッターは空き家を不法占拠するだけでなく、そこを使ってコンサートを開いたり、情報センター(infokiosque)にしたり、有機菜園をしたり、リサイクルやブリコラージュのアトリエを開いたりする。低所得層のための社会教育センターや芸術家村などに改装してしまうこともある。

スクオットにはいろんなケースがあるようだが、それは一種の象徴的な行為である。住むこと=生きることの最低限の権利の正当性を主張しているだけでなく、消費社会を当然のこととして受け入れている私たちの生き方を問い直している。そもそも「土地は誰のものなのか」とか「所有とは何か」(土地に勝手に線を引いて、これはオレのものだと宣言した瞬間から始まった)という根源的な問いにまでさかのぼらせる。私たち自身、未曾有の金融危機(恐慌?)において資本主義システムが崩壊し、その暴走と限界を無様な形でさらけ出すのを目撃しているだけでなく、その混乱の中に否応なしに巻き込まれ、覚えのないツケまで払わされている。

□JEUDI NOIR http://www.jeudi-noir.org/




cyberbloom

rankingbanner_03.gif
↑ライターたちの励みになりますので、ぜひ1票=クリックお願いします!

FBN22.png
posted by cyberbloom at 12:11 | パリ ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | グローバリゼーションを考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。