2009年04月21日

単数と複数

ニホンジンにとって単数複数の概念自体はなくもないけど、これが文法的に重要な価値をもっているかといえば、それは希薄だといえるでしょう。たとえば「わたしは犬が好きです」という表現を英&仏語に変換すると

・I like dogs(英&米語)
・J’aime les chiens(仏語)

日語では犬は単数であるか複数であるかは、ほとんど重要な価値をもちません。「犬が好き」といえば「犬」が好きだということで、それだけのことです。ところが、ニホンジンからみれば、なんでこんなもんがついとるのかと不思議になってしまいますが、英&仏語ではわざわざ複数形をあらわすsがついている。これ、なんぞや?
 
どうも欧米人というのは、とある事物・名詞にたいして特定化、不特定化、ひとつか、それ以上か、という概念整理を暗黙裡におこなっているようです。つまり、日語の「犬が好き」という表現は、「犬」を一個の「集合」概念としてとらえて、ある意味では「犬という動物種が好き」といった感じになっているように思います。ところがI like dogs&J’aime les chiensというとき、犬をいったん複数化することによって1匹2匹3匹…n匹と具体的なイメージを与え、そしてこれらの「集合」としてのdogs& chiensを想起しているようです。強引に日語化すると「あの犬もこの犬も、犬はみんな好き」といった感じなんだろうか。

ちなみに、すくなくともフランス語では定冠詞がつくので、以上のような「複数の犬集合」という考え方でいいんだろうと思います。ただ英語では無冠詞になるのは、なんでなんだろうか。そもそもtheはthatに由来するそうですが、I like the dogsとなると限定的側面が強すぎて、たとえば「(だれかの飼っている)あの数匹の犬が好き」って感じになるのかな。

また、みなさんはポーランドのザメンホフが開発したエスペラント語というのをご存知でしょうか。ヨーロッパの言語を参照しつつ、人称による動詞活用や名詞の性など、文法的にややこしいものをとっぱらった、だれでも手軽に学べる人工言語のことですが、これにも名詞の単数と複数の区別はあるそうです。ザメンホフが、日本語には文法的にこの区別がないと知ったら、いったいどうしただろうか。

さらに、ぼくの高校時代、英語の先生が不可算名詞の説明するときに「チーズは数えられないでしょ。たとえば犬は1匹2匹と数えられるけど、チーズはそうじゃないですよね。だから不可算になる。だから不定冠詞のaや複数形のsがつかないんだ」みたいなニュアンスで教えてくれましたが、ぼくはかなり不信感をもちました。製品一個一個としては数えられるし、そもそも実際上チーズは一個に固まって存在しているのではなく、大なり小なりそれこそ食べこぼしのゴミくずのようになったチーズでさえ、やる気があるなら数えられるはずなのになぁと。その後、チーズというかcheeseは一個のまとまった製品などを考慮に入れれば可算名詞となり、たとえばI bought two cheesesといえることを知り、自分の考えはどうも間違ってなさそうだと推論。さらにその後、名詞の可算と不可算は客観的事実というより、話者(≒言語体系)の心象に依存するというという説明をみて、目から鱗がぽろぽろ落ちるように納得。つまるところ、英米人が「I love cheese.」というときの「cheese」は、日本語でいう「わたしはチーズが好き」というときに日本人のとらえる「チーズ」の数の数え方とおなじような心的状況をもっているのかなぁと。





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posted by cyberbloom at 22:10 | パリ ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | フランス語講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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