2009年04月18日

『人類が消えた世界』

本書を紹介するにあたって、まずこの動画をご覧ください。

人類が消えた世界ある日、人間が理由はともかく忽然と消えてしまったら地球の未来はどうなるだろうか。

たとえば自分たちの住む家は風雨にさらされ、蔦などの雑草に覆われ、シロアリに侵食されつつ崩壊。動画にもあるように、人間のつくった構造物は500年〜数千年後には、ほぼ跡形もないほど倒壊するといわれています。そのあとは「野生?(この時点で野生と呼べるのかな?)動物」の生活圏の一部をなすことになります。ただ人間の足跡が跡形もなく消え去るかといえばそうでもなく、たとえばタイヤなどの樹脂製品は自然分解=腐敗しにくいため、地球上に本来の目的を失ったまま存在しつづけます…。

とにかく、とても面白い本でした。タイトルが暗示している&以上紹介したように、当書は、たしかに人類が消え去った後の未来世界を予測している近未来SFノンフィクションとしても読めます。けれどもそれは全体のなかの一部にすぎません。その扱っている話題は多岐にわたります。最新の科学的知見に配慮しつつ、人類の誕生とそれに影響を与えたであろう地球生態系とをめぐる仮説。さらにその人類の誕生が今度は地球の生態系にいかなる影響を与えてきたのか。人類と切っても切り離せないその「発明物」(たとえば上記の樹脂製品であるタイヤやプラスチックなど)は人類がいなくなったときに自然界でどのように振舞うか。とどめの一撃として、当書巻頭でそのテーマを暗示するために用意された、地球環境そのものを支えている太陽が50億年後に膨張して地球を飲み込んでしまうイラスト。著者のA・ワイズマンのスタンスはあくまで&良くも悪くも傍観者的立場であり、人類にとって起こりうる&起こりえたであろう現実をいやが応でも徹底的に吟味し、そして人間的優しさに満ち溢れた視線でもって当書をしたためています。そしてそのぶん、巷に出回っているどの「地球と人間を考える書物」よりも説得力のある力作として仕上がっています。

ちなみに、いま現在の時点で人類がいなくなったら、地球の今後がどのようになるかが当書のオリジナルHPに掲載されていますが、これを抜粋しておきましょう:

2日後:ニューヨークの地下鉄網が水没。
7日後:原子炉が冷却システムのダウンにより溶解。
1年後:通りの舗道が凍結&氷融により侵食を受ける。
2~4年後:雑草が通りを覆いだす。
4年後:人口の構造物が凍結&氷融により崩れはじめる。
5年後:ニューヨークの大部分が焼失。
20年後:数多の河川や沼地がマンハッタンに形成。
100年後:ほぼすべての民家の屋根が崩壊し、建造物の荒廃を加速する。
500年後:旧ニューヨーク市街を密林が覆う。
5000年後:核弾頭の腐食により、放射性プルトニウム239が大気に放出。
15,000年後:石造物の崩壊。
10万年後:2酸化炭素排出量が産業革命以前に戻る。
1000万年後:銅像などが人間の痕跡をとどめている。
10億年後:人類のみたこともない生物の誕生・
50億年後:太陽の膨張により地球をふくむ内惑星が焼失。

人類にとって、いろんな視点を提供する本じゃないかなぁ。




superlight

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posted by cyberbloom at 22:08 | パリ ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評−その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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