2009年03月15日

フランス語の野球用語(2)

2007.11.19baseball.jpgさてさて、前回のエントリーで紹介したとおり、きょうはフランス語の野球用語の紹介となります。まずは日仏野球用語の対応表を示し、それにコメントをつけるというかたちで以下説明していきましょう。

*ポジション
Lanceur:投手
Receveur:捕手
Premier but:一塁手
Deuxième but:二塁手
Troisième but:三塁手
Arrêt-court:遊撃手
Voltigeur de gauche:左翼手
Voltigeur de centre:中堅手
Voltigeur de droite:右翼手

→実際のところこれ以外の呼称もあるようですが(Voltigeur de gauche→Champ gauche 、ウィキペディアによるとフランス語の野球のポジションはこのようになっていました。ちなみにVoltigeurというのは単語自体知らなかったので辞書で調べてみると「曲芸師」「警察のオートバイ部隊」とあり、外野を縦横無尽に走り回る姿からこの命名となったんでしょうかね? 

またArret-courtってのは英語のShort-stopからそのまま直訳したのでしょうが、ところでなぜこのポジションがShort-stop&遊撃手という名なのかご存じですか?野球ができた当初、内野の一塁手〜三塁手はそれぞれ対応するベースに張りつくように守っていて、つまり一塁手&三塁手はいまとほぼおなじ位置、そして二塁手はセカンドベースの周辺を守っていました。ところがおなじ内野のShort-stop&遊撃手ってのは特定の位置を受けもたず、状況に応じてファースト方向やサード方向に寄ったりと守備位置を切り替え、しかもバッターからみてピッチャーとほかの内野手の中間に位置することがおおかったそうです。そのためShort-stopという呼称が与えられたそうです。

日本で「遊撃手」という呼び名が発明されたのが19世紀末といわれてますが、おそらく日本でもそのころまで、Short-stop&遊撃手はさきに説明したような役割を期待されたポジションだったんでしょうね。大リーグでも日本のプロ野球でも現在Short-stop&遊撃手は一番守備能力の高い選手が守る花形ポジションですが、あらためて意識すると日本語の「遊撃手」っていうのはネーミングもなかなかかっこいいですよね。


*球種
la rapide:速球
la fourchette:フォークボール
la balle fronde:スプリットフィンガー
la courbe:カーブ
la glissante:スライダー
le changement de vitesse:チェンジアップ
la balle papillon:ナックル

→実際の球筋から判断してだいたい妥当な命名だと思いますが、まず意味不明なのがla balle fronde&スプリットフィンガー。英語名ではSplit-fingered fastballといい、人差し指と中指を速球のときより少し広げて握り、高速で微妙に落下する球種です。「高速フォーク」といったほうが直感的に理解できるかもしれませんね。で、なぜこれがフランス語ではfrondeボールなのか? fronde=投石機の石の弾道がこれに近いんだろうか? 

そしてベタなのが、le changement de vitesse&チェンジアップ。日本では比較的新しい球種なので、古い野球ファンでチェンジアップがよくわからないというひとがいますが、これはボールを鷲づかみにして速球とおなじフォームで投げる球種です。この握りのおかげで速球よりも2~30q/hほど球速が落ちるため、ピッチャーの投球フォームをみて速球がくると思ったバッターはタイミングを狂わされます。で、le changement de vitesseというのはこの内容をモロ説明しているわけですが、なんだか冗長でまどろっこしい。シャンジュマン・ドゥ・ヴィテッスって・・・。

秀逸なのがla balle papillon&ナックルボール。ナックルってのは極力ボールに回転をかけないようにしながら投げる球種のことで、回転がないぶん空気抵抗&風の影響を受けて投げた本人でさえどう変化するかわかりません。ふらふら〜っと揺れる挙動不審なボールです。これをして「papillon=蝶々」ボールというんですから、なんとも優雅ですね。

baseball2007.11.19b.jpg(ちなみに、このナックルボールってのは様々なフランスのインターネットサイトで紹介されているのですが(たとえばここhttp://www.ffbsc.org/imgs/docu/BB.swfでも)、これってフランスで野球が浸透しきってないことの証になるんじゃないかなと思うのですが、どうなのかな・・・? というのもナックルボールは投げる側も打つ側も予測不能なぶん「魔球」扱いの球種といわれているのですが、コントロールが難しい&ある程度の球速がないとただのスローボールと大差ない(以上つまり習得がかなり難しい)、さらに球速が遅いためランナーに盗塁されやすいなどの理由から、たとえば日本では小中高校の段階ではこのボールを投げることすら禁ずる指導者がほとんどで、実際日米のプロ野球選手でもナックルボールを自在に操る投手は歴史的にみてもごくわずかです。そんな実用性のない技術を大々的に紹介しているのを目にすると、フランスは野球ではまだまだおのぼりさんだなという気がしますね・・・。

さらにフランスの野球地域リーグの試合画像をみると、キャッチャーがミットに右手をそえてピッチャーのボールをキャッチしてました。ボールの衝撃を抑えるためにやっているのでしょうが、少なくとも日本ではファウルチップなどで右指を突き指する危険性があるし動きも鈍くなるので、右腕は体の後ろにそえて(ワンバウンドしたはねる暴投を押さえるとき以外は)片手でキャッチするように指導されます(メジャーリーグのキャッチャーもほとんどそうなので、たぶんアメリカでもおなじように指導されているのでしょう)。それを思えば、危なっかしいというかなんというか、フランスの野球はまだまだ基本的なことを吸収すべき黎明期にあるといわざるをえませんね・・・。




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posted by cyberbloom at 15:05 | パリ ☁ | Comment(2) | TrackBack(0) | スポーツ(サッカー、野球…) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
仏語で野球用語を検索していて辿り着きました。
仏語を始めてしばらく経ちますが、いまは少しスランプに陥っています。ボキャブラリーはあるのですが、なかなか言葉が口からすぐに出てこないため、先生に毎日少しでいいから文章を書くように進められました。
しかし、何か書けと言わても同じような毎日、なかなか書く内容もなくどうしようかと考えているうちに大好きな野球のことを書こうと思い立ちました。
野球はシーズン中はほぼ毎日どこかで試合がありますし、自分の事ではないので書きやすいと思ったのです。
ただ、フランスにはあまり野球の文化がない為、仏語の野球用語がわかならくて困っていたのですが、このような記事を書いてくださって助かりました。ありがとうございました。
フランスと野球、なかなか面白い組み合わせではないかと私は思っています。
フランス人ももっと野球に興味を持って欲しいですね!また野球について書いてくださいね。
松井大輔さんも好きなので、サッカーの話題も楽しみにしています。
Posted by Allez! les Tigres at 2009年04月23日 03:47
Allez! les Tigresさん、コメントありがとうございます。ブログの管理人です。そういう使い方をしていただけるなんて想像もつきませんでした。確かにこの手のボキャブラリーは探すのが難いかもしれません。でも多くの日本人が自己表現する際には避けて通れない分野ですよね。野球とサッカーの記事を充実してもらえるようにライターさんに伝えておきます。今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by cyberbloom at 2009年04月23日 20:52
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