2009年02月21日

Genius

ChangesiPod を使っておられる皆さんは、すなわちパソコンで iTunes をお使いだということになるわけだが、最新バージョンの iTunes に入っている Genius という機能をお試しになられただろうか。これは起動させると、その人のライブラリに入っている曲全体を分析して、その人ごのみだと思われる曲を探し出す、というものである。たとえばある曲を選択すると、その曲に相性がよさそうな曲をライブラリのなかからピックアップして、新しいプレイリストを作成してくれるわけで、自分では思いもつかなかった曲どうしの組み合わせが生まれてくる。


さらにすごいのは、ライブラリにない曲からおすすめの曲を探し出してくる、という機能だ。それらの曲は少しの間だけだが試聴することもでき、気になったアーティストはそこから iTunes Store へ移動してアーティストの情報を得たり他の曲を聴いたりすることもできる。さらに気に入ればダウンロードで曲を購入することもできるのだ。もちろん今までも iTunes Store は存在して曲単位でのダウンロード販売をしていたのだが、今回 Genius が登場したことで、個人のライブラリと無数に存在する世界中の音楽がより接近したといえるだろう。


具体例として私の iTunes のライブラリから Tahiti 80 のChanges を選択してみよう。サイドバーにはまず、Tahiti 80 自身の曲でライブラリに入っていないアルバムや曲が紹介され、その下におすすめとして 10 曲ほど別のアーティストの曲があがっている。

So Light / Benny Sings
Rose / Who Made Who
Skitzo Dancer, Pt.1 / Scenario Rock
Numero 1 / Sourya
Living in a Magazine / Zoot Woman
On My Mind / The Sunday Drivers
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I LOVE YOU・・・LIVE AT THE BIMHUIS出てきたのはまったく知らない人ばかり。たまたま2曲分の無料クーポンがあったので、挙げられた曲や、同じアーティストの別の曲をさんざん試聴したあと、興味をもった Benny Sings の Little Donna と Sourya の Sleeping Beauty の2曲を購入してみた。


前者はオランダ出身のシンガーソングライターが歌う、聴きやすいまさに王道のポップスなのだが、決して平凡な音ではなく表情豊かな魅力的な曲だった。タヒチのほかにもギルバート・オサリバンやスティーヴィー・ワンダーが好きな人にもおすすめできる曲だろう。


後者は2004年にパリでデビューした3人組のインディー・バンドぐらいの情報しかないが、この曲はダウンテンポ系でエールや Zero 7 などのテイストに近い。これは彼らの曲が多く入っている私のライブラリから判断した結果だということか。


sourya.jpg来日も果たしていてある程度の知名度はある Benny Sings はまだしも、4曲入りEPしか発表していない Sourya などは、このシステムがなければ巡り会う機会はほとんどなかっただろう。Genius は個人のライブラリという閉ざされた領域を縦横に広がっている未知の音楽スペースへ開く扉みたいなものに思える(もちろんそこには「ビジネス」が思いっきり絡んでくるのだが)。


Genius が登場したことで、iTunes 上では「アルバム」という概念がさらに崩壊してしまった。10代のときにレコードというメディアが中心だった身としては、このような状況になるとは予想もしていなかったし、いろんな店を渡り歩いて1枚のアルバムを探しまくったり、参加者や曲名、あるいはジャケットのみで中身を予想して買うというギャンブルみたいなことをやったり、という楽しみはもはや失われてしまうのかもしれないと思うと寂しい。しかし一方でCDショップでは手にもとらなかったであろうアーティストの作品と接触するチャンスを家にいながら与えられるこのシステムは、音楽の新しい聴き方を提示してくれてもいる。アーティストの側でも今後このような状況に対応した動きを見せてくるだろうし、音楽を聴くという行為は新しい方向へさらに進んでいくのかもしれない。



exquise

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posted by cyberbloom at 22:17 | パリ 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | WEB+MOBILE+PC | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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