2009年02月14日

Shelby「1+1」(1999)

4.jpg ケレン・アンKeren Ann(本名Keren Ann Zeidel)は、1974年イスラエルに生まれ、オランダで育ち、11歳でパリに移住。19歳の頃から自作曲をたずさえレコード会社回りをしていたらしいが、結果ははかばかしいものではなかった。その後彼女はバンジャマン・ビオレーBenjamin Biolay(1973年生)と出会い、共同で曲を作り始める(私生活でも彼は彼女のパートナーとなる)。ビオレーの発案で彼女はシェルビーShelbyという3人組のユニット(ビオレーはメンバーに入っていない)を結成、1999年1月、シングル「1+1」でデビューする。

 ストリングスとギターをフィーチュアし、フランス語と英語半々で歌われるこの曲は小ヒットを記録する。ケレン・アンとビオレー(およびほか2名(詳細不明))の共作曲だが、発表の時期からいってふたりのコラボレーションの最初期に位置する作品だろう。名曲である。ケレン・アンといえば、張りつめた冬の空気を思わせる、低音で歌われるクールなフォークといったイメージが強い。だがこの曲は、どちらかというとアンチームな感じのスローなギターポップ。翌年に出る彼女のファーストアルバム中の「Décrocher les étoiles」や「Aéroplane」などと若干タッチが似ているが、その後の彼女の音楽にはあまりみられなくなる雰囲気の曲である。この曲はとても歌いづらかったと彼女はのちに述懐している――「ロック調」の曲が自分の声に合っていないと思っていたらしい――が、そういう感じはまったく与えない。浮遊感のあるヴォーカルはむしろとても魅力的だ。冬の夜に望遠鏡で天体観測をするメンバーたちがでてくるヴィデオクリップもなかなかいい(私は発表当時MCMで放映していたのを録画して持っていて、折に触れて見ている)。画面に映っているケレン・アン以外のメンバーは、グザヴィエ・ドゥリュオーXavier Druaut(ギターの男性)とカレン・ブリュノンKaren Brunon(ヴァイオリンの女性)。カレンはビオレーの音楽学校(リヨンのコンセルバトワール)時代の友人。のちにKaren Aprilの名で歌手としてシングル盤を出す。またヴァイオリニストとしてビオレーやケレン・アンを初めとする多くのアーティストのアルバムに参加している。グザヴィエのその後はよくわからない。

La Biographie de Luka Philipsen シェルビーでの活動についてケレン・アンは、あまりいい思い出を持っていないようである。彼女自身の言葉を引用しておく。「私たちはこの曲を、チャレンジのつもりで、また、仲間うちの楽しみのために世に出してみたいという気持ちは持っていた。(…)でも、レコード会社のグループの売り出し方には腹が立った。知らないあいだに写真や記事が勝手に出て、自分たちで管理することがまったく出来ず、耐えられない気持ちになった。あの連中は音楽のことなんか全然わかってなかった。私たちが出したのはシングル一枚っきり。でも、それだけの契約しかしなくてよかった。発売日の前日にはもうやめたいって思ってたし、みんなは私の決心を尊重してくれた。もちろんビオレーとの曲作りはそのあとも続けたけど」。

 だがこの曲は、ほどなく彼女とビオレーの未来に大きな影響を与えることになる。この曲を耳にしたことがきっかけでケレン・アンに関心を持ったラジオ・フランスの社員コリーヌ・ジュバールが、翌2000年に出た彼女のファーストアルバム「La biographie de Luka Philipsen」(大部分の曲がビオレーとの共作、またプロデュースもビオレー)を半ば引退状態にあった旧知の大御所歌手アンリ・サルヴァドールに送ったのだ。ケレン・アンの音楽にすっかり魅了されたサルヴァドールは彼女とビオレーに自分の新作への協力を申し込んだ。彼らの作品5曲を含むサルヴァドールのアルバム「Chambre avec vue」(2000)はミリオンセラーを記録し、ふたりは一躍スポットライトを浴びる存在になる....。

 彼らの公私両面にわたるパートナーシップは、ビオレーのファーストアルバム「Rose Kennedy」(2002)、ケレン・アンのセカンドアルバム「La disparition」(2002)まで続いたあと途切れるが、別れたあともふたりはそれぞれ、アーティストとしての(またビオレーはあわせて音楽プロデューサとしての)キャリアを着実に積み重ねている。


Nolita■「1+1」のCDは、現在入手不可。歌詞はここ(ただこの歌詞、ちょっと間違いあり)。ヴィデオクリップはここ。youtube のコメント欄では、このクリップの監督を名乗るRégis Fourrerという人が撮影時の思い出を語っている。

■Shelbyのデビューの詳細およびケレンアンの発言はLudvic Perlin, Une nouvelle chanson française : Vincent, Carla, M et les autres, ÉDITIONS HORS COLLECTION, Paris,2005.に依る。この本、昨今のフレンチミュージックシーンを知るには好適な書物。

■ケレン・アンのアルバムは間単に手にはいる。オススメしたいのはファーストアルバム「La Biographie de Luka Philipsen」と「Nolita」(2004)。

■バンジャマン・ビオレーについてはいずれ詳しい紹介をしたいが、とりあえず一枚オススメするなら、ファーストアルバム「Rose Kennedy」。

■アンリ・サルヴァドールの「Chambre avec vue」は国内盤(邦題「サルヴァドールからの手紙」)があるが、出来たらフランス盤を聴いてみてほしい。というのも国内盤ではケレン・アン=バンジャマン・ビオレーによる冒頭の2つの名曲Jardin d'hiverとChambre avec vueが、それぞれBRAZILIAN VERSION、ENGLISH VERSIONに差し替えられているため。やはりオリジナルの仏語ヴァージョンで聴きたいところだ。





MANCHOT AUBERGINE

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posted by cyberbloom at 13:19 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | フレンチポップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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