2008年10月26日

週刊フランス情報 20 - 26 OCTOBRE 後編

仏大統領、「ユーロ圏財務省」提言 金融危機に対応
■欧州連合(EU)議長国フランスのサルコジ大統領は21日に仏ストラスブールの欧州議会で演説し、金融危機への対応策として「ユーロ圏財務・経済省」の新設を提言した。危機対応には財務相会合では不十分と指摘し、まずユーロ圏の首脳会議の定期開催を提案。通貨・金融政策に加え、財政運営や金融監督行政でもユーロ圏15カ国が政策統合を加速する必要があると訴えた。
■欧州金融危機の深刻化をふまえ、仏大統領は「経済問題を扱う政府(財務・経済省)を立ち上げないと、ユーロ圏が危機対応を進めるのは不可能だ」と語った。そのうえで当面はユーロ圏15カ国の首脳会議を定期的に開いて「経済政策をより緊密に連携させる必要がある」と述べた。
(NIKKEI、10月22日)

フランス大統領、欧州政府系ファンド設立を提唱
■フランスのサルコジ大統領は、欧州版政府系ファンド(SWF)設立を提唱した。世界的な金融危機の打撃を受けた企業の株式を取得し、「収奪者」から守るためという。同大統領はまた、来月開かれる予定の金融危機対応のための主要国首脳会議(サミット)に中国とインドも加えるよう、欧州連合(EU)として働きかけていく意向を示した。
■大統領は欧州議会での演説後、記者団に対し「危機の中で、国益と欧州の利益を守ることになる政府系ファンドの有用性を考えないわけにはいかない」と述べた。その上で、海外の政府系ファンドを脅威とみなす一方で欧州版のファンドを救世主ととらえるのは矛盾しているとの見方に対し、「政府系ファンドが脅威といっているわけではない。自らを守る必要があるということだ」と語った。大統領によると、政府系ファンドは安く資金を調達し、取得した株式をいずれ売却することで利益を得ることが可能。
■欧州委員会のバローゾ委員長は「非常に面白い」アイディアとしながらも、域内各国のなかには相反する考え方があると指摘した。イタリアなどは外国の政府系ファンドによる投資への規制法案を模索する一方、スペインはアラブ諸国のオイルマネーによる投資を積極的に受け入れている。
(10月22日、ロイター)
□該当するAP通信(10 oct.)のフランス語版はこんな感じ
Nicolas Sarkozy plaide pour un "gouvernement économique" de la zone euro
Voulant tirer les leçons de la crise financière, Nicolas Sarkozy a remis sur la table mardi à Strasbourg son idée d'un "gouvernement économique" de la zone euro et plaidé pour des "fonds souverains nationaux" alors qu'il entend réunir prochainement les dirigeants européens pour préparer la réforme du système financier mondial.
★"fonds souverains nationaux"(=政府系ファンド)なんかも辞書に載っていない最近の言葉。記事では"gouvernement économique de la zone euro"を「ユーロ圏財務省」と訳している。ニュースを見ていると、"recapitalisation"(=資本注入)という言葉も頻繁に耳にする。

仏政府、大手銀6行に公的資金1.4兆円注入へ
■フランス政府は20日、国内上位6銀行に対し総額105億ユーロ(約1兆4100億円)の一斉資本注入を行うと発表した。国際的な金融危機に対処するため、欧州各国政府が一斉に金融機関支援策に乗り出したのに続き20日、BNPパリバ(BNP Paribas)など国内主要銀行の首脳陣と協議したクリスティーヌ・ラガルド経済・財政・雇用相が発表した。
■対象となる銀行と資本注入額は、仏銀最大手クレディ・アグリコル(Credit Agricole)に30億ユーロ(約4020億円)、BNPパリバに25億5000万ユーロ(3417億円)、ソシエテ・ジェネラル(Societe Generale)に17億ユーロ(約2280億円)、クレディ・ミュチュエル(Credit Mutuel)に12億ユーロ(約1610億円)、ケス・デパルニュ(Caisse d'Epargne)に11億ユーロ(約1474億円)、バンク・ポピュレール(Banque Populaire)に9億5000万ユーロ(約1273億円)となっている。
(10月21日、AFP)
★名だたるフランスの金融機関が名を連ねている。フランス人の友だちが「クレディ・アグリコルに口座を持っているんだけど、大丈夫かな」とメールで聞いてきたが、とりあえず資本注入が行われる模様。クレディ・アグリコルは日本で言うと農協系の金融機関。しかし、ヨーロッパはいつ取り付け騒ぎのパニックになってもおかしくない状況が続いていて、預金全額保護を発表するなどパニック回避に躍起。日本にいると全くそういう危機感が伝わってこないが。

円高問題も討論=金融サミットで仏大統領
■フランスのサルコジ大統領は25日、アジア欧州会議(ASEM)第7回首脳会合閉幕後の共同記者会見で、11月15日にワシントンで開かれる金融サミットで「具体的な方針決定に至ることを希望している」と述べ、危機打開の方策に期待を表明した。その上で「税務、通貨問題も討議する。特に、日本円が急上昇しており、これも討論の範囲に含まれる」と述べた。 
[10月25日、時事通信社]
EUR-YEN CHART(ユーロ円チャート)
□「プラザ合意以降の為替相場の動きについて」(10月25日、毎日新聞)
★つい最近まで1ユーロ=160‐170円って感じだったのに、先週金曜、一時113円までユーロが急落。世界の通貨で円が一人勝ちしている。本当は今一番世界で信用される通貨であることを喜ぶべきところだが、輸出で稼いでいる日本は大打撃。国内の大半の輸出関連企業の想定為替レートは、対ドルで105円前後、ユーロも150‐160円とみられ、ソニーなど09年3月期の業績予想を下方修正する企業が続出している。

欧米首脳が中国をべた褒め、金融危機直面で中国に秋波
■2008年10月23日、中国紙・環球時報は欧米各国の高官が突然中国のことを褒め称えだしたことを取り上げ、その背景には金融危機にどうにかして中国の力を借りようとする意図が見え隠れすると分析した。
■まず口火を切ったのは米ポールソン財務長官。21日、同氏は「中国は世界の主要な経済体として引き受けるべき責任を全うしており、世界経済の安定のため努力している」と評価した。同日、中国訪問中のマコーミック財務次官も「中国政府は金融危機と闘う参加者であり、かつ盟友」と表現した。環球時報は「米国高官が公開の場で中国を盟友と表現したのは十数年ぶり」だと伝えている。同じく21日、仏サルコジ大統領も「金融サミットにはG8以外に中国、インドなど新興国5か国を招くべき」と発言、特に中国は強力な金融能力を有しており国際金融体制再建には不可欠だとの見方を示した。
■ストックホルム大学のパウエル教授は、一国の信頼を築くには数十年もの積み重ねが必要で、欧米諸国から中国は十分な信頼を得ているわけではないと忠告し、今の称賛はどうにかして中国の力を借りようとする一時の策に過ぎないと指摘した。中国現代国際関係研究院グローバル研究センターの宿景祥(スー・ジンシアン)主任は、各国の称賛は金融危機に対する中国の実力と施策の有効性への承認だとして評価した。しかし一方で中国一国では世界を救う能力がないことも明らかであり、この金融危機は中国が国際経済の大舞台に参加する絶好のチャンスになるとコメントした。
(10月25日、Record China)




★commented by cyberbloom 

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posted by cyberbloom at 23:09 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(2) | 週刊フランス情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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