2008年09月30日

河鍋暁斎

 京都国立博物館で河鍋暁斎展を見てきました。

暁斎妖怪百景 「泣きたくなるほどおもしろい」というコピーのとおり、泣きと笑い、その他に恐怖やおどろき、やさしさなど、あらゆる感情を存分に堪能できました。

 幽界・冥界、俗世界。森羅万象。物語に鳥獣戯画。地獄の閻魔と美しい仏。
 技術面では、ごちゃごちゃ言わずとも、圧倒的に上手い。タッチだけでなく、画面の大きさも構成も意図的、効果的に使い分けられていて、表現世界の広さがすごい。なにより観察眼の鋭さが桁違いだと思いました。
 
 幽霊といえば、円山応挙が有名ですが、応挙の幽霊がどこか幽玄なのに対し、暁斎の幽霊は、本気で怖かったです。これ以上ないくらい恨めしげな目つきは忘れられません。
 蟹や、踊る猫、蛙、お茶目な妖怪は現代でもマンガとして通じるんでは?微笑ましいです。よく観察されているせいか、戯画化しても嘘くさくない。
 骸骨のモチーフが結構出てきます。「九相図」(死んでから土に還るまでの過程)のリアルなものから、踊ったり三味線弾いたりしてるものも。
 お弟子さんのために描いた手本もありました。コンドル(お雇い外国人。鹿鳴館の建築家)も弟子だったので、お手本もいろいろ試行錯誤の跡がありました。
 
 閻魔大王は、地獄で審判を下す、こわーい絵ばかりではなく、「こんなはずでは」とうろたえる閻魔さまもありました。今は、子どもを叱る時に閻魔大王は引き合いに出されるんだろうか?(私は祖母に閻魔さまを引き合いに出され、よく叱られました。)
 パンフレットなどに一休さんが載っていますが、とても高僧とは思えないおどけた(そして何気にエロ爺な)一休さんです。
 若くして死んだ少女のために描いた絵は、絵本のように優しくて愛らしい、繊細な感じ。
 インパクト大だったのは「放屁合戦」。…なんか凄まじい光景です。後ろにいたおじいちゃんが笑ってました。

 同じ会場で見ていた外国人の二人組が「crazy painter」とか、「amazing」とか何度も呟いてました。
 
 めちゃくちゃ精巧なのに、飄々としてる。目一杯勉強してるけど、ガリ勉に見えない。
 作品を見てると、豪気で粋な、遊んでるけどまじめなのか、まじめに遊んでるのか、そんな感じのおじさんを想像してしまいました。
 今年は没後120年だそうですが、120年経ってもこの迫力と存在感。
 芸術に限らないですが、物理的な意味ではなく、今あるもので120年の時間に耐えられるものって何だろう?
 

□京都国立博物館「絵画の冒険者 暁斎」(注:2008年4月月8日〜5月11日、すでに終了しています)

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5 綺麗でかっこいいし、、
5 一番恐ろしいのは暁斎の顔!




tk(2008年4月16日)

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posted by cyberbloom at 23:11 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 美術館&美術展 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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