2008年09月07日

週刊フランス情報 1 - 7 SEPTEMBRE 後編

経営難の米住宅金融、実質国有化で調整
■米メディアは5日、サブプライムローン問題で経営難に陥っている政府系住宅金融2社を、米政府が実質国有化すると相次いで報じた。早ければ今週末にも、2社への支援計画が発表される見通しだ。ワシントン・ポスト紙(電子版)は関係筋の話として、政府当局者がすでに「公的資金を投入して連邦の管理下に置くことと、経営トップの更迭を2社に通告した」と報じた。
■ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は、「救済額を算出するのは不可能だが、米国史上、最大の救済となるだろう。政府は、アジア市場が開く前の日曜日に発表する方向で計画している」と指摘している。ポールソン財務長官や米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長、2社の幹部らは5日午後、2社の経営問題について協議した。
(9月6日、読売新聞)
★これは世界経済にとって大きなニュース。ファニーメイとフレディマックが発行、あるいは保証している証券の残高は日本円で約550兆円。日本のGDPに匹敵する。GSE(Government Supported Enterprise =政府支援企業)と呼ばれる2社が発行する債券は、これまで米国債並みに安全とみなされ、世界各国の政府や政府系機関、民間の大手金融機関が保有してきた(日本でも25兆円!)。もしこの2社が破綻すれば、世界経済への衝撃は計り知れず、世界恐慌の引き金になりかねないと言われていた。
★ポールソン米財務長官が7日記者会見し、ファニーメイとフレディマックを政府の管理下に置くと発表(9月8日、NIKKEI NET)。2社合計で2000億ドルの優先株購入枠を設定、経営状況に応じ段階的に公的資金を注入することを決めた。しかし、これですべて終わりというわけではないだろう。アメリカ政府が莫大な借金を抱え込むことになるのだから。
★ファニーメイとフレディマックの影響が韓国の通貨ウォンを直撃している。よりによって、韓国政府は外貨準備の多くを2社が発行した債券で運用していた。信用不安の高まりで債券の売却が困難となり、ドル売り介入に必要な資金の調達が難しくなっていることがウォン下落の原因のようだ。さらに、外国人投資家らが、韓国債の償還期限が集中する9月に、保有する債券を一斉に売却し、資金を引き揚げるのではいう噂も流れ、外国のメディアも「Black September=9月危機」(Sep. 1,The Times)を唱え始めている。一方、韓国政府は沈静化に躍起。
★先週の金曜、日経平均は一時400円近く下げ、12000円を割り込みそうになり、NYダウも11000ドル割れ直前で辛うじて反転。日米だけでなく、世界市場は冷え切った状態。今週は公的資金注入を材料に底入れするか。(コメント、8日7時に修正)

世界同時景気減速でクロス円急落、一時1ユーロ=150円台まで下げる
■ユーロ/円など対ドル以外の円相場で、円が数年ぶりの高値へ急伸している。世界同時の景気減速を織り込むかたちでユーロや英ポンド、豪ドルなどが大きく下落していることに加え、世界的な株価や商品価格の調整入りで、投資家がリスク回避の円買いに動いていることも一因。
■さらに欧州中央銀行(ECB)がオペの受け入れ担保のヘアカット(担保の掛け目)を引き上げたことも、参加者に金融システム不安再燃の可能性を想起させている。長期化していた円安の反動とも言える対クロス通貨での円高は当面続く可能性があり、一段の円高進展を想定する声も出ている。
■急速な円高が進んだ主因は、ユーロや豪ドルなどの大幅な下落にある。特にインフレ高進が根強かったユーロ圏や英国、資源国の代表格である豪州などで足元景気の急速な鈍化が目立ち始めるのと同時に各国通貨が売られ「グローバル・リセッションを織り込む動き」が進んでいる。
■世界同時景気減速の流れは、始まったばかりだ。前日に政策金利を据え置いたECBは、ユーロ圏15カ国の域内総生産(GDP)見通しを08年中間値で1.4%、09年1.2%と、6月時点の08年1.8%、09年1.5%から下方修正。2日には利上げを続けてきた豪準備銀行(中央銀行)が7年ぶりに利下げに転じたほか、英国ではダーリング財務相が後に一部メディアの誤解だとしたものの、英景気は過去「60年間で最悪」と発言したと伝わるなど、各国・地域の景況感悪化は著しい。市場でもきょうにかけての円高で「セリングクライマックスに達したとは言いがたい」といい、クロス円には一段の下値不安が残っている。通貨的には特にユーロにネガティブという。
(9月5日、ロイター)

EU、ロシアへのエネルギー依存「新たな脅威に」
■欧州連合(EU)は5日に仏南部アビニョンで開いた外相会合で、ロシアへの過度のエネルギー依存が安全保障上の「新たな脅威になる」という認識で一致した。グルジア紛争を巡るロシアとの関係悪化で、将来的にロシアからの石油や天然ガスの供給が滞る恐れがあるため。EUは今後、ソラナ共通外交・安全保障上級代表を中心に安全保障戦略の見直しに着手する方針だ。
■同日のEU外相会合では、ソラナ外交代表が気候変動や食料危機に加えて「エネルギー問題が(安全保障上の)新たな対象になってきた」などと報告。石油や天然ガスの調達先をロシア以外にも広げる必要があると訴えた。EUはエネルギーの輸入量の3―4割をロシアに頼っており、グルジア紛争に絡んでロシアが供給停止などの資源外交を強めるという懸念が出ている。 これに関連して、欧州委員会のフェレロワルトナー委員(対外関係担当)は「特に米国との関係が重要になっている」という考えを表明。
(9月5日、NIKKEI.NET)

「欧米は新冷戦に敗北する」、英誌エコノミストのエドワード・ルーカス氏
■資源やマネーを武器に欧米と対立するロシアを描いた著書『新冷戦』を2月に出版した英誌エコノミストの国際部副編集長、エドワード・ルーカス氏は本紙と会見し、グルジア紛争について「ロシアは、欧米の結束を強める武力闘争から、自らが優位に立てる資源を武器にした外交闘争に打って出るだろう。欧米は短期的には、ロシアに勝つことはできない」と極めて厳しい見方を示した。
■ロシアとの新たな「パートナーシップ協力協定」に関する交渉を延期した1日の欧州連合(EU)緊急首脳会議について、同氏は「イタリア、スペイン、ギリシャなど(EU内の)親露派は孤立した」と指摘し、「ロシアは外交上、大きな間違いを犯した」と述べた。同氏はまた「EUは、対ロシアでかつてない結束を示したが、親露派と強硬派が歩み寄ったにすぎない」とも分析。EUと北大西洋条約機構(NATO)は、石油・天然ガスをロシアに依存するイタリア、フランス、ドイツなどと、北海油田に近い英国、旧ソ連圏のポーランド、チェコ、バルト三国を中心とする強硬派の間にある深い溝は埋まっていないと主張した。同氏によると、NATOは加盟国のポーランドとバルト三国についても、ロシアの侵略への対処計画は持っておらず、「これでは真のNATO加盟国とはいえない」と急速に進められた東方拡大の破綻(はたん)を指摘し、グルジアやウクライナへのNATO拡大が実現しても、安全は保障されないとの見方を示した。
■また、ロシア国営独占企業体ガスプロムが出資する天然ガス・パイプラインの関連会社にドイツのシュレーダー前首相やフィンランドのリッポネン元首相が会長や社外顧問に就任している点を挙げ、ロシアがパイプラインの建設を通じ欧州に親露派ネットワークを広げていることを強調した。氏は今回の紛争で、ロシア軍が、グルジア経由の石油・天然ガスのパイプラインをいつでも破壊できる能力を示したことも指摘。これ以上の武力行使は、すでに分裂状態にある欧州の結束を強めるだけで得策ではないことから、資源とマネーを活用できるソフトパワー外交に戻る可能性が強いとの見方を示した。欧米はこれに対し、当面は有効な対抗手段を打てず、「短期的には、新冷戦に敗北することになる」と語った。
(9月5日、産経新聞)

独身法相が妊娠「私の私生活は複雑」
■フランスのダチ法相(42)は3日、自身が妊娠している事実を認めた。法相は独身で、子供の父親についてコメントを拒否している。出産すれば歴代の仏閣僚で初の未婚の母となる。法相は「私は40歳を超しており、まだ危険を伴う段階なので十分気を付けたい。出産は私にとって本質的なもの」と懐妊を認め、その上で「私の私生活は複雑。これがメディアに言える限度」と述べた。先月末の夏休みが明けた初閣議で、法相のおなかが大きくなっている点が注目されていた。
■法相は父がモロッコ、母がアルジェリア出身の移民系2世。苦学の末、検事代理となり、サルコジ大統領に移民系として初の閣僚に抜てきされたが、強引に司法改革を進める手法に反発する職員の辞任が相次ぎ、ルモンド紙は「最近、大統領の側近閣僚の輪から外された」と報じている。
(9月4日、毎日新聞)

英語習得が成功の秘けつと高校生に特別授業、フランス教育相
■フランスのダルコス国民教育相は1日、英語習得が社会での成功のかぎにもなるとして高校生に同語学の特別集中授業を提供する計画を明らかにした。2月、夏季の休暇期間を利用したプログラム。参加は選択制となっている。AP通信が報じた。
■同相は地元のTFIテレビの取材に応じ、貧弱な英語の会話能力はハンディキャップになると強調。裕福な家庭は子供を海外留学させる余裕があるが、この学習の権利をすべての生徒に与えたいとの動機を説明した。同相の発言は、母国語への自負が極めて強いフランスでは異例。シラク前大統領は2006年、欧州連合(EU)首脳会議で自国人が英語をしゃべり始めた際、席を立った過去もある。
(9月2日、CNN.AP)

今週のMain Blog
「FRENCH BOOM CHRONICLE フレンチ・ブーム年表‐1990年代‐」
「オリンピックのフランス:金メダル7個の内訳は?」
「黒カナリアのぶらりスペイン一人旅(3)」
「黒カナリアのぶらりスペイン一人旅(2) 」

8月のアクセス
□Main Blog 訪問者数 3000人(+4.7%) べージビュー 38217PV
□Info*base 訪問者数 4596人(+1.1%) ページビュー 47099PV
□8月の最多アクセス・ワードは「ソフトバンク」。例のフランス語のCMです。




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posted by cyberbloom at 16:49 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 週刊フランス情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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