2008年08月31日

週刊フランス情報 25 - 31 AUOT 後編

放射性ガス漏れで警告=「レベル3」国内最悪事故−ベルギー
■ベルギー南部のフルリュスの国立放射性物質研究所で放射性物質を含むガス漏れ事故があり、当局は29日、町民約2万人に対して周辺地域で採れた野菜や牛乳などの摂取を控えるよう警告した。同国国内の原子力関連の事故としては過去最悪という。
■同研究所では先週末、施設内の換気口から放射性ヨウ素を含むガス漏れが検出された。当局は当初、ガス漏れ事故を原子力施設の事故の重大さを示す国際評価尺度(INES)で「レベル3(重大な異常事象)」と評価したが、住民や環境へのリスクはないとして警告を出さなかった。
Une région belge touchée par une fuite radioactive, Vendredi 29 août 2008(France 24)
★フランス語の動画あり(France 24)。ベルギー南部はフランス語圏。警察が周辺地域で取れた野菜や牛乳を食べないようにとパトカーで警告して回っている。この事故も例に漏れず、最初は情報の隠蔽をはかったようだ。今回は原発事故ではないが、ヨーロッパもこの手の事故が多くなってきた。日本のマスコミはちゃんと報道していないみたい。
(8月30日、時事通信)

仏外相「戦争が恐ろしい」
■欧州連合(EU)議長国を務めるフランスのクシュネル外相は26日、ロシアが南オセチア自治州などのグルジアからの独立を承認したことを受け「われわれは戦争が恐ろしい。戦争は望んでいない」と述べ、ロシアと欧米諸国との間で緊張が高まっているとの認識を示した。フランスのテレビに述べた。 EUは対ロシア関係を主要議題として9月1日に緊急首脳会議を開催する予定。クシュネル氏は25日「(ロシアに対する)制裁は協議しない」と明言したが、ポーランドや旧ソ連バルト3国が強硬な対応を求めており、首脳会議の行方が注目される。
■ロシアのメドベージェフ大統領が「われわれは(欧米との)冷戦を望んでいないが、恐れてもいない」と言い切ったことを念頭に、クシュネル氏は「冷たい(戦争)だけなら大したことはない。熱い戦争は望んでいない」と繰り返した。
(8月25日、共同通信)

「次の標的はクリミア半島」仏外相が警告
■フランスのクシュネル外相は27日、仏ラジオとの会見で、グルジア領アブハジア自治州と南オセチア自治共和国の独立を承認したロシアが今後、ウクライナ南部のクリミア半島や、モルドバの沿ドニエストル地方など、旧ソ連構成諸国のロシア系住民居住地域を次なる標的としてくる危険があると警告した。
■外相は、「ウクライナが8月13日に黒海でのロシア艦隊の動きを制限する行動に出たことでロシア・グルジア紛争に間接的に関与した」と述べ、ロシアが黒海の要所であるクリミア半島を重視していると示唆した。
(8月27日、産経新聞)
★クリミア半島は、黒海の北岸、ウクライナに位置する。クリミア半島と言えば、1854年のクリミア戦争が真っ先に想起される。もちろん、クシュネル外相もそれを念頭に置いているのだろう。クリミア戦争は、イギリス、フランス、オスマン=トルコ帝国を中心とした同盟軍がロシアと戦い、その戦闘地域はドナウ川周辺、クリミア半島さらにはカムチャツカ半島にまで及んだ大規模な戦争。背景には汎スラブ主義を掲げるロシアのイデオロギーや南下政策があり、一方で「瀕死の病人」と言われたオスマン=トルコ帝国に対する西欧列強のハイエナ的な利害関心があった。

グルジア紛争をどう見るか NATOとEUはロシアに無力
■グルジア紛争でロシアのメドベージェフ大統領は「冷戦を恐れず」と対米欧への対決姿勢を見せつけた。フランス戦略分析研究所のフランソワ・ジェレ所長は産経新聞との会見で、ロシアは紛争を好機としてソ連崩壊以来の「失地回復」を狙っているとの見方を示した。発言の要旨は次のとおり。
グルジアは非常にまずい行動を取った。ロシアの反撃を過小評価し米国の支援を過大評価したからだ。ブッシュ米政権が2期目の初期であったら多少、米国の反応は違ったかもしれないが、現在の米国にとってグルジア紛争はしょせん、ロシアの内政問題だ。次期米政権にとっての最優先事項は国内の経済再建であり、外交面ではイラク、イラン、イスラエルの中東問題とアフガニスタンだ。
■ロシアにとってグルジア紛争は、ソ連崩壊から2004年に旧ワルシャワ条約機構加盟国のポーランドなど10カ国が欧州連合(EU)に加盟するまでに失った影響力を回復する好機となった。ロシアにとっては、これらの国のEU加盟や北大西洋条約機構(NATO)加盟は我慢の限界であり、グルジア、ウクライナのNATO加盟は許すわけにはいかなかった。ロシアは今後、グルジアでの親ロシア政権樹立を画策するはずだ。
■クシュネル仏外相がロシアの次のターゲットはクリミア半島、ウクライナ、モルドバだと指摘したのは正しい。帝政ロシア時代から黒海は地政学上、重要だからだ。
■今回、サルコジ仏大統領はEU議長として迅速に動いたが、EUは対ロシアの具体的方策を持っていない。中・東欧と仏独英とは内部分裂状態だ。仏独英はロシアのエネルギー源に依存している。英国の発言は強硬だが、石油大手BPがロシアの世話になっているから実際の態度は極めて慎重だ。フランスも石油大手トタルがロシアに進出している。メルケル独首相はロシアを嫌悪しているかもしれないが、経済的にも政治的にもドイツはロシアと良好な関係を維持する必要がある。
■グルジア紛争はロシアが強硬に出た場合、NATOもEUも国連も無力だということを示す結果になった。いや、NATOもEUもロシアのこうした面を熟知しているからこそ、これまで“戦略的パートナー”としてロシアを取り込んできたわけだ。EUが繰り返す“政治的解決”とはロシアとうまくやっていくという意味にほかならない。残念ながらグルジア紛争はロシアの勝利だ。
(8月30日、産経新聞)

仏大統領、来年国賓で訪日
■フランス外務省の大使会議に出席中のフォール駐日フランス大使は27日、産経新聞に対し、サルコジ大統領が、来年中に日本を公式訪問する計画のあることを明らかにした。時期に関しては日本の総選挙など政局を見極めながら、「最良の時期を選びたい」と述べた。
■日本政府は日仏交流150周年の今年、大統領の公式訪問の希望を伝えていたが、フランスが7月1日から欧州連合(EU)議長国になるなど大統領の日程が多忙を極めた。その結果、主要国首脳会議(G8、洞爺湖サミット)の際の訪日にとどまり、150周年記念行事にはフィヨン首相が4月に訪日し出席した。
■シラク前大統領は訪日回数も約50回と多く、大相撲愛好家など親日家として知られているため、サルコジ政権の誕生によって日仏関係の冷却化が懸念されていた。フランスとしては大統領の訪日で、こうした「誤解」(同大使)や懸念を一掃したいところだ。7月に発表された「仏外交白書」では「日本は長年の不可欠のパートナー」と述べ、日仏関係の重要性を指摘している。
(8月28日、産経新聞)

トラック業者一斉行動、2万人「燃料高騰は異常」
■燃油価格の高騰を受け、各地のトラック運送業者が26日、「経営危機突破一斉行動」をスタートさせた。全日本トラック協会(東京、中西英一郎会長)の呼び掛けによる、初の全国統一的なアピール活動となる。
■初日は東京、大阪など31都道府県で決起大会やデモ行進をしたり、横断幕を付けたトラックを走行させたりして、国や地方自治体に、高速道路料金や地方税の軽油引取税の引き下げなどの対策を求める。同協会によれば、参加者は合計2万人規模に上る。
■全日本トラック協会傘下のトラック運送業者は約5万1000社で、国内業者の8割強を占める。協会幹部によると、数年前から強化された排ガス規制に対応するためトラックを新型に買い替え、その借金を返済できずにいる中小企業も多い。最近は「低価格競争が続く中で、石油の値上がりに見舞われ、経営が切迫している」という。
■同協会が今月行ったアンケートでは、主なトラック燃料の軽油は1リットル139円で、平成15年度の年間平均価格と比べ同75円上昇。国内全業者で、年間コストを約1兆2000億円押し上げたと試算されている。
(8月26日、産経新聞)
★これは日本の話題。誰もが原油の高騰の影響を免れないが、漁業(特に遠洋漁業は経費に対する燃料費の割合が高い)とともによくニュースになるのが、トラックの運送業。このニュースで思い出したのが、2000年にイギリスで起こったガソリン危機。同年の9月7日、度重なるガソリン税の引き上げと燃料価格の高騰によって収入が激減したイギリスのトラック運転手アラン・フィーリーと彼に同調した農民が中心となり、政府に抗議して国内の6つのガソリン配送施設をバリケードで封鎖。国内の大半のスタンドのガソリンが枯渇するというガソリン危機が起きた。スーパーに生鮮食料品がなくなり、救急車は動かず、病院で薬剤が不足するなど、生活物資の供給や公共サービスにも大きな影響が出た。警察の説得により、政府が60日以内に対策を取ることを条件として、バリケードは撤去されたが、しばらく混乱が続いた。この事件は、同年8月にフランスの漁師が重油値上げに反対して港湾を封鎖したのを発端に、ヨーロッパじゅうに波及した石油値上げ反対の動きのひとつだった。
★その背景には石油価格の上昇に対する意見を募るサイトが多数立ち上がっていたこと、それにアクセスする携帯電話の急速な普及があった。まさに二重の意味での mobilization (=モバイル化/動員)だったわけである。
★ガソリン危機が起こった2000年の原油価格は30ドル台。今は少し下がったとはいえまだ110ドル台。直近で145ドルをつけたわけだから2000年から比べても5倍近く上がったことになる。

共産党、「蟹工船」ブームで1万人新規入党
■小林多喜二の「蟹工船」ブームに乗る共産党の地方行脚に従来の支持者を超えた関心が集まっている。格差問題に対する取り組みなどが評価され、昨年9月以降の10カ月間で約1万人が新規に入党。次期衆院選をにらんだ幹部の演説会には1カ所平均約1300人が集まる。接点のなかった業界団体や保守系地方議員との対話も行われ、国政の長期低迷脱却への期待がふくらみ始めている。(続きはタイトルをクリック)
★記事の続きには、上記のトラック協会も共産党と接触し、「弱者への思いやりを感じる」と、保守系地方議員も「私は与党議員だが、私たちの気持ちを一番代弁してくれるのは共産党だ」と明言したと書かれている。共産党入党なんて意外な動きだが、格差問題に対して若い世代が行動を起こすことはないだろうと高をくくっていた政府も企業も、この事実を受け止めざるをえないだろう。
(8月31日、毎日新聞)




★commented by cyberbloom

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posted by cyberbloom at 22:31 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 週刊フランス情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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