2008年08月22日

A.P.C.の幼稚園

APC Tracks, Vol. 2フレンチ・シックの代名詞として日本でも人気の高いフランスのブランド、A.P.C.。デザイナー兼オーナーのジャン・トゥイトゥは、服のデザインだけにあきたらず音楽レーベルを立ち上げレコーディングスタジオまで拵えてしまうなど、56才の今も新しいことに挑むキモチを失わないことで知られています。目下彼が心血を注いで取り組んでいる最新プロジェクト、それは、全く新しい幼稚園をつくること、です。
 
そもそものきっかけは、3才になる娘リリーちゃんを通わせたいと思う幼稚園が見つからなかったこと。奥さんと二人、あれこれかたっぱしからあたってみたのですが、公立幼稚園では子供を教室に詰め込んで画一的なマニュアル教育しかしないし、近所のカソリック系私立幼稚園には、一神教について複雑な思いがある身としては通わせたくない(ちなみにトゥイトゥはチュニジア育ち、両親はユダヤ系)。それなら自分たちの理想の幼稚園を自前でこしらえてしまえばいい、となったそうです。
 
前の結婚でもうけた子供を、ヴァカンスでなく格差社会の現実を教えるためにインドへつれていくなど型破りなパパであるトゥイトゥですが、愛娘のために拵えた幼稚園、Ateliers de la Petite Enfance(略称A.P.E.)のカリキュラムもユニークそのもの。あくまで子供の個性、自主性を尊重し、大人があれこれ押し付けたり仕切ることは一切なし。厳密なルールもありません。
 
apcape01.jpgまた、子供の時から本物に、上質なものに触れさせるべきというトゥイトゥの信念を反映して、普通の幼稚園ではとても望めないような理想的な環境づくりもなされています。A.P.C.のショップ・デザインを手がけるローラン・ドゥローによる簡素ながら機能的で明るいインテリアの教室に配置されたのは、アルヴァ・アアルトがデザインしたコドモ用の椅子。お昼寝のブランケットはグレーのコットンカシミヤで、お絵描き用スモックはA.P.C.調のミニマル・シックなデザイン。親達の反応も上々で、25名の定員枠はオシャレ業界人の子供達で既に埋まってしまっているとか。
 
しかし、理想を現実にするには先立つ物が必要。1年分の授業料はなんと16,000ドル。優秀な先生(お絵描きはジェシカ・オグデンが担当)が児童数人に一人付く手厚いシステムで人件費がかかることもさることながら、パリ6区、リュクサンブール公園から数ブロックという立地のおかげで土地の賃貸料が馬鹿にならないのも高額な授業料の原因だそうです。
 
友人達から「常に時代の先を読んで行動する男」と評されているトゥイトゥ。幼稚園の分校を建設することも検討中だそうです。トゥイトゥモデルの幼稚園が主流になる日がくるかもしれません。
(「W」2008年4月号より)


□A.P.C. http://www.apc.fr/
□A.P.C.-JPN http://www.apcjp.com/jpn/
A.P.C.-MUSIQUE





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posted by cyberbloom at 15:48 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 子育て+少子化対策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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