2008年08月09日

ルネッサンス RENAISSANCE

renaissance01.jpg「ルネッサンス」は近未来のパリを舞台に、タフな男と謎の美女が活躍する陰謀と暴力のドラマ。従来のSF作品はしばしば華やかなテクノロジーを強調してきたが、ここで描かれるパリは真夏の闇夜のような美しいモノクロ。まるでフィルム・ノワールと攻殻機動隊が出会ったような、衝撃的でオリジナルな世界だ。確かにこんな映像は見たことがない。「ルネッサンス」はCGアニメと実写の組み合わせ、そして白と黒だけを使っている。日本のアニメの影響を受けつつ、フランスが先導するホットなジャンル、グラフィック・ノベルの先鋭的な産物と言えるだろう。

「舞台は2054年のパリ。この設定がクリスチャン・ヴォルクマン監督とスタッフたちの腕が最高に冴えている部分だ。このフランスの首都は容易にそれと認められるが(エッフェル塔とモンマルトルのサクレクール寺院が二大ランドマーク)、典型的な建築物には、いかにも近未来的なタッチがたっぷりと加えられている。広々としたガラス張りのペントハウスからノートルダム寺院前の何層にもなった透明な歩道まで、夜の場面が多く、雨が頻繁に降り、フィルム・ノワールの表現において光の都は文字通りのものとして幾度となく示唆されている」(アマゾンの解説より抜粋)

光の都を白と黒によって表現する「ルネッサンス」の魅力が的確に表現されている。ヴォルクマンは影響を受けた作家として押井守を挙げるが、「攻殻機動隊」のアジア的な近未来の廃墟(ある意味どこでもない場所)とは違って、不朽の記号群と化したパリを斬新に描くのは至難の技だ。その永遠の観光都市を全く新しい平面において描き出すことに成功している。他には大友克弘の名前を挙げ、また宮崎駿の生徒を自認する。リドリー・スコットの「ブレードランナー」や20世紀初頭の表現主義の影響も色濃い。確かにキャラクターの造形やストーリーが弱い印象を受けるが(ここが賛否の分かれるところ)、それは今後の宿題にしてもらって、長編第一作目は映像のインパクトを味わいたい(難を言えば、慣れない映像のせいか目がちょっと痛くなるし、黒が多いシーンではキャラの動きがわかりにくい)。

ヴォルクマンはフランスで大人のためのアニメを作り始めた先駆者の一人だ。彼が言うには、フランスでは大人がアニメを見る習慣がない(「アニメと子供の発見」参照)。アニメはまず子供の、あるいは家族のためのものである。大人だけの世界では相変わらずリアリズム(現実を舞台にするという意味での)が重視される。あくまで現実のみが公共性を担う場なのだという堅固なコンセンサスの反映なのだろう。映画のセザール賞にはアニメ部門はなく、アニメ映画を正しく評価するという土壌が全くない。それを徐々に変えていきたい、とヴォルクマンは力強く宣言する。

RENAISSANCE 公式サイト(英)
※trailer をクリックすれば映像が見れます。サイトもかなり凝ってます。
RENAISSANCE 公式サイト(仏)
※ENTREZ DANS LE SITE DU FILM というバナーをクリック。さらに videos をクリック。
RENAISSANCE-TRAILER(long version)


ルネッサンス
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2 映像は革命的 ストーリーは三流すぎ
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都市のデザインは一見の価値あり。
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2 きたいはずれ。
1 映像革命ですか。




cyberbloom

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posted by cyberbloom at 00:18 | パリ ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ+アニメ+BD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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