2008年07月08日

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

IMG_1747.jpg香川県は、私にとって大変魅力的な県です。まわりに広がる美しい海の景色や壮大な瀬戸大橋、のんびりしてちょっとひなびた感じの山道、いたる所にある安くておいしい讃岐うどんの店・・・すべてがツボです。それに加えて、香川県は現代アート作品の宝庫でもあります。公立の美術館をはじめ、イサム・ノグチ庭園美術館、瀬戸内海に浮かぶベネッセアートサイト直島など見どころがたくさん。おまけに県庁舎は丹下健三設計です。先日もまた行きたい病に取り憑かれ、今年いちばんの寒波のなか早起きして行ってきました。これまで4回訪れたのですが、行くと必ず足を運ぶのが丸亀市猪熊弦一郎現代美術館です。


この美術館はその名の通り、香川県出身の画家猪熊弦一郎の協力で作られたもので、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の新館も担当した谷口吉生による設計です。JR丸亀駅の前にそびえたつスタイリッシュな建物の入り口には猪熊氏の壁画やオブジェが配置されていて、建物自体がひとつの作品のようです。駅前にこんなカッコイイ美術館があるなんて、本当にうらやましい。


IMG_1772.jpg内部の空間設計もすばらしく、それほど大きな美術館ではないのにゆったり落ち着いた気分になれます。もちろん猪熊氏の作品は常設展示で見ることができ、おそらくマティスやピカソに影響を受けた若かりし頃の作品から、抽象絵画へ移行した円熟期、シンプルで素朴なタッチが何だか愛らしい晩年の作品までじっくり見ることができます。作品は定期的に入れ替えているようで、行くたびに新鮮な気分で鑑賞することができました。


並行して行われている企画展も見逃せません。今回はフィンランド出身の女性アーティストで、写真やヴィデオ・アートを中心に表現活動しているエイヤ=リーサ・アハティラの個展が催されていました。2つの写真を並列させて、見る側にそれらの関係性を探らせる「セノグラファーズ・マインド Scenographer's Mind 」シリーズがまず興味深かったです。おしゃべりをしている2人の少女とターミナルに横付けされた飛行機、という言ってみればそれぞれ何でもないような写真が、ひとたび並べられると、私たちはどうしてもその2つを関連づけてひとつの「物語」を考え出そうとしてしまいますし、それが作品のねらいでもあるように思えます。


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彼女の特徴であるという「物語性」を最も感じることができるのは、今回いちばん大きな作品である「祈りのとき The Hour of Prayer 」で、4つのスクリーンに映し出される映像と彼女自身によるナレーションによるものです。最愛の犬をガンで亡くした体験と、遠く離れた地で早朝に聞いた犬の合唱の話が、彼女の口から語られてひとつになることで高揚感が生まれ、そして最後に高らかに歌う彼女が何と力強く美しいことか。静かに心を揺さぶられる作品でした。


残念なことに、このアハティラ展で目にすることができるのは5作品のみ。彼女に興味をもって調べてみたところ、何と今パリのジュ・ドゥ・ポムで大きな回顧展が開かれているそうで、こちらでは彼女の作品の大半を鑑賞することができるようです(この情報はこの記事が main blog に掲載された2008年2月27日のものです)。パリへひとっ飛びして、という希望はとうていかないそうにないので、せめてこの展覧会のカタログをアマゾンで取り寄せてその雰囲気を少しでも味わいたいと思っています。





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posted by cyberbloom at 21:25 | パリ ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 美術館&美術展 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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