2008年06月13日

少子化特集(1) 07年の出生率の発表

07年の日本の出生率が発表されたので、少子化のプチ特集を。「2年連続増」と書きながら、話が全然違うではないか。政府が出生数を増やすうえで頼みの綱とする団塊ジュニア世代の女性が30代後半にさしかかっているらしい。

出生率、07年は1.34と2年連続増
フランスだったら産めると思った■07年の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数に相当)は、06年を0.02ポイント上回り、1.34となったことが、厚生労働省が4日まとめた人口動態統計で明らかになった。同出生率は06年に6年ぶりで上昇し、2年連続増えた。ただ、人口減で出産適齢期の女性の数そのものが減っており、出生数は2929人減の108万9745人。史上最低だった05年(106万2530人)に次いで少なく、今後も上昇に転じる見通しはない。
■政府は94年の「エンゼルプラン」を皮切りに、何度も少子化対策をまとめてきたが、メニューは毎度、(1)子育ての経済的負担の解消、(2)保育や育児休業の拡充、(3)労働時間短縮やパートの均等待遇など働き方の見直し−で、新味に乏しい。既に対策は出尽くしている。今やいかに予算を大幅に増やし、国民の意識をどう変えていくかという段階に来ている。
■05年度、60歳以上に配分された社会保障給付費は、前年度比1.7%増の61兆7079億円。全体の70.2%を占める。一方、少子化対策は3兆5637億円と全体の4.1%で、前年度と同水準にとどまる。少子化関連費が10%弱の英、仏との差は大きい。
■政府は「日本の給付は高齢世代に偏っている」との批判を受け、再三配分の見直しを口にしてきた。ところが、後期高齢者医療制度の修正でも、政府・与党あげて高齢者の負担軽減に走り、現役世代にツケを回そうとしているのが実情だ。
■政府の「子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議」は昨年末、保育サービス充実などに1.5兆〜2.4兆円の追加支出が必要との提言をまとめ、暗に消費税1%の増税が必要とにおわせた。後継の社会保障国民会議も、同じ路線だ。
■ただ、所得が低いほど負担が重い消費税増税は若年層への影響が大きく、「子育て支援に向かない財源」との指摘も多い。社会保障費の、世代間の配分見直しは必至だ。政府が出生数を増やすうえで頼みの綱とする団塊ジュニア世代の女性も、30代後半にさしかかった。対策は時間との勝負でもある。
(6月4日、毎日新聞)

企業の子育て支援策に「効果は皆無」、「カネをくれるよりヒマをくれ」
■出産・子育て真っただ中の社員のホンネは、最近、企業で一大ブームとなっているのが、社員の子育て支援だ。最も目立っているのが社内託児所の開設で、例えば総合商社の三井物産は、東京・大手町の一等地にある本社に、「かるがもファミリー保育園」を今年4月に開設。金融業界でも、みずほフィナンシャルグループや新生銀行など名だたる大企業が社内託児所を作っている。ほかにも、社員に子どもが生まれるたびに数十万円規模の祝い金を支給する企業は近年増えており、子育て支援策は、大流行中ともいえるのだ。
■企業によるこういった子育て支援策は、進展する少子化対策の一環として「前向きな話題」だと大手マスコミも積極的に取り上げている。だが、少子化問題に詳しい研究者は、「こういった対策は、少子化対策としてはほとんど意味がない。費用対効果を考えると、会社にとってはむしろ有害とすら言える」と批判する…。(続きはタイトルをクリック)
(6月5日、日刊サイゾー)

プレカリアート―デジタル日雇い世代の不安な生き方 (新書y 181)子育て中の身の上としては、子育てには金よりも時間が要ることは身にしみてわかる。もっとも一定のお金も必要だが、この国の子供手当ては1人目で月5000円。オムツ代にもならない。

この記事の後半にも書いてあることだが、企業は社員の子育ての時間を確保するために人員(雇用)を増やすという肝心なことをやらない。それゆえに他の社員にそのしわ寄せが行き(つまり育児休暇がとりづらいってこと)、イメージは良いが効果の薄い子育て支援に支出していることになる。

企業は、雇用を絞っていることが、若い世代の生活の不安定につながり、それが何よりも子供を作る意欲を削いでいることが根本的にわかっていない。結局はすべて雇用の問題につながっていくのだ。とにかくあらゆるしわ寄せが若い世代に向き、働く3人に1人が非正規雇用という経済的に不安定な状態で、子供を産め、育てろと言っても無理な話だ。

先日授業で読んでいたフランス語のテキストにたまたまフランスの子育てに関する記事があり、「フランス人が子供を作るのは、今の時代はそんなに悪くないし、子供の時代は自分の時代よりは良くなると思っているからだ」とあった。もちろん、真に受ける必要はないが、日本人の若い世代は全く逆のことを考えているだろう。

もっとも企業は確信犯的にやっているのかもしれない。自分たちは多国籍化しているので、日本の将来がどうなろうと関係がない。日本のフリーターを使い倒しても、安い労働力なんてどこの国からでも調達できるということだろうか。中央公論(4月号「いま隣にある貧困」特集)に載っていた佐藤優との対談で、雨宮処凛が「フリーターを使い捨てていく中で、うっすらした憎しみがものすごい勢いで広がっている。後々には大きな影響を及ぼすと思いますが、気にもとめていないような企業の傲慢な態度には驚かざるを得ない」と言っていた。その矢先、例の秋葉原の無差別殺人事件が起こった。

容疑者の青年を自動車部品工場に送った人材派遣会社はいみじくも雨宮処凛がいつも取り上げている会社だった。もちろん犯罪には個別的な条件があるし、同じ条件下でみんな同じ行動に走るわけではない。だが、会社の名前が挙がったついでに、若者の搾取の実態について知っておいても損はないだろう。佐藤優は、このような搾取が続くと、「同じ国を生きる仲間としての同胞意識がなくなり、国家が崩壊する」と危惧する。まず治安の悪化は避けられないだろう。保守主義者たちは日本人としてのアイデンティティーや共同性の重要性をうたいながら、そういう大企業の経営者たちとベッタリ癒着している。全く説得力がない。事件を受けて管理をさらに強化しようと彼らは言うのだが、それだけでは犯罪予備軍としての若者のイメージを煽るだけで、同胞意識や未来を共有しようという共感など生まれようがない。大企業の子育て支援を受けられるのは一部の人間だけである。少子化対策は何よりも若い世代全体の底上げにあるのではないのか。

「カネをくれるより、夫のサポートをくれ」という要求も高い。子持ちの男性を早く家に帰らせることだが、同じように時間の捻出が必要になる。フランスの出生率の上昇には「週35時間労働制」も大きく寄与していると言われている。月曜から木曜まで9 to 5で働けば金曜は半ドン。これは社会党のジョスパン首相のもとでワークシェアリング(1人の仕事の時間を減らして全体の雇用を増やす)として実現。つまり雇用政策が少子化対策にも繋がったのだ。しかし、サルコジ政権は「もっと働いてもっと稼ごう」をモットーにこの枠組みを崩そうとしている。

少子化対策…大本命は夫の妻へのサポート?
■20~30代の生活実態を継続的に追う厚生労働省の「21世紀成年者縦断調査」で、子供がいる夫婦において、夫の休日の家事や育児時間が長くなれば、2人目の子供が生まれる割合が高い傾向が19日、分かった。家庭内で夫の妻へのサポートが少子化歯止めに不可欠な要素といえそうだ。
■調査は少子化対策に役立てるため、14年10月末に20~34歳だった全国の男女を毎年追跡。5回目の今回は18年11月に約1万8000人から回答を得た。調査によると、2人目が生まれた夫婦で、夫の休日の家事・育児時間が「2時間未満」だったのは35.9%だが、「8時間以上」では63.2%となり、夫の家事・育児時間が長いほど、子供が生まれる割合が高くなった。「家事・育児時間がない」と答えたのは20.5%で最低だった。また、子供がいる夫婦で、働く妻の職場に育児休業制度がある場合は、45.5%の夫婦に2人目がいることも判明。「制度なし」では28%にとどまっており、会社の出産・育児支援制度が多産に影響を与える実態も浮かんだ。厚生労働省は「妻が2人目を産む決断をするには夫や会社の支援が大切になる傾向が強くなっている」と話している。
(3月22日、産経新聞)



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posted by cyberbloom at 10:49 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 子育て+少子化対策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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