2008年06月10日

「失われた時を求めて」を1冊で

失われた時を求めて〈1 第1篇〉スワン家のほうへ (ちくま文庫)前回、「カラマーゾフの兄弟」や「ユリシーズ」といった長大な小説がイギリスやフランスでは文庫本1冊に収まっていることについて書いた。
だが、上には上がいるものである。
ジョイスと並び、20世紀最大の小説家と称されるマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」も、本国フランスでは1冊で読むことができるのだ。
もちろん抄訳版ではなく、完全版でである。
日本では、鈴木道彦訳の集英社文庫版で13冊。
井上究一郎訳のちくま文庫版で10冊であることを考えれば、その密度の濃さがうかがえる。
ガリマールの1冊版では、2408ページ。
価格は5867円(※)とあるから、1ページあたり約2.4円ということになる。
ブックオフ並みの価格である。
言うまでもなく、これは文庫版で揃えるよりも、はるかに安上がりだ。

また、表紙にはプルーストと同時代の写真家ジャック=アンリ・ラルティーグの写真が使われており、邦訳版より見た目は数段カッコ良い。
広辞苑より一回り小さいサイズということで、当然、文庫本のように行方不明になることもない。
それは一つの固体として、部屋の中に独自の地位を占めることになるのだ。

もちろん、一冊であるが故の欠点もあるだろう。
広辞苑より小型であるとはいえ、やはり通勤・通学の途中に電車の中で読もうという気にはなれない。
それは、常に机の上に置かれることが前提とされているように思われる。

ここまで書いて、その内容に全く触れていないことに気が付いた。
しかし、本書の内容について語ることは筆者には目下のところ不可能である。
というのも、この「失われた時〜」の一冊本、購入して随分と経つが「お得な買い物をした」という幸福感に未だに包まれており、そのページを開く気にはなれないのだ。
というわけで、「失われた時」は、悲しいかな、未だに「失われた」ままである。


※2008年6月10日現在、8989円


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posted by cyberbloom at 23:07 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評−フランス小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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